平成31年度は、補助事業期間の延長が認められたため、平成30年度に行い得なかった補足調査と成果の取りまとめを行った。その結果として、
(1)補足調査の一環として、従来の環境配慮義務論に基づく制度の本丸ともいえる、環境アセスメント制度の法構造的な特徴の把握を試みた。具体的には、世界で初めて環境アセスメントを法制化した、米国の国家環境政策法(NEPA)(1970年制定)と、その先駆と評される魚類・野生生物調整法(1934年制定)をとり上げ、その歴史・構造分析を行ったものである。この分析においては、NEPAをFWCAの「後発の公共政策」と措定し、後者から前者への制度発展過程において、それらの法律による開発官庁の裁量統制の核心が、環境配慮要件から代替案検討要件へと変化していったこと等を指摘した。本研究の成果の一つである「環境影響評価法制度の源流―なぜ代替案検討義務はアセスの「核心」なのか」(後述)では、右の指摘等を踏まえて、日本のアセス法制のあり方を改善するための視点や具体的な法改正の方向等についてのアイデア等を示した。
(2)環境配慮義務を実質化する一方策として、本研究では、「生態系サービス」に着目してきたが、補足調査では、近年注目されている「景観利益」という概念にも、同様の実質化機能が求められるかどうかを試論的に探った。具体的には、自然風致景観利益が侵害されるおそれがあるとして、抗告訴訟の原告適格を認め、注目を集めた大阪高裁判決をとり上げ、その原告適格論を中心に、判旨の論理構造を分析し、国立公園指定等の法定ゾーニングによる景観利益の客観化、居住要件から生活重要利用要件への観点の拡大、自然環境と景観利益の接合論等についての試論を提供したものである。
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