水政策とエネルギー政策には、様々な関連性があるが、両者の関連性が十分検討されているとは言い難い。2019年度は、前年度までの調査の結果を踏まえて、追加で文献調査を行い、業績の公表に努めた。まず、米国では、シェールオイル・ガス採掘による地下水等への影響緩和策は主に州政府および自治体に委ねられている。ペンシルバニア州においても、シェールガス・オイルの採掘が進むが、州憲法に基づく採掘規制条例が現れ、2013年には環境権に基づく自治体条例による規制を認めた判決が確定した(拙稿「米国における州法および自治体条例によるシェールガス・オイルの採掘規制の動向」上智法学論集62巻3・4号合併号199-210頁[2019年])。また、拙稿「原発訴訟からみた電源多様化の展望」友岡史仁・武田邦宣編『エネルギー産業の法・政策・実務』(弘文堂、2019年)248-291頁では、原発稼働と再生可能エネルギーの普及の媒介項である揚水式発電所(および送電線網)が、原発再稼働後は原子力発電の調整弁とされ、原子力発電が再生可能エネルギーを締め出している実態を明らかにした。さらに、2018年5月の森林経営管理法制定を踏まえて2018年度日本農業法学会学術大会シンポジウムにおいて報告を行う中で、気候変動緩和策および気候変動適応策との関連について検討した。 最後に、2020年7月から11月にかけて、拙稿「米国法における公共信託法理の半世紀(一)(二・完)―自然資源法 における持続可能性への挑戦」阪大法学70巻2号・5号2020年に掲載する予定である。拙稿は、自然資源法において、公共信託法理は、所有・管理・保全という実体的機能のみならず民主的意思決定という手続的機能を担ってきたこと、しかしながら、要件・効果などの不明確さなどの使い勝手の悪さから、近年では、実務的な重要性が失われつつあることも、併せて明らかにした。
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