研究課題/領域番号 |
16K03441
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鈴木 静 愛媛大学, 法文学部, 教授 (80335885)
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研究分担者 |
井上 英夫 金沢大学, 国際基幹教育院, 特任教授 (40114011) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 患者の人権 / ハンセン病 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究概要の実績は以下のとおりである。 第一に、ハンセン病を理由とした特別法廷問題についての研究成果を、論文として公表した。代表者鈴木は、ノルウェーのハンセン病政策の歴史的展開と比較し、日本の司法を含む歴史的展開の問題点を明らかにした。分担者である井上は、特別法廷問題の意義と残された課題について複数の論文を公表し、今後の再発防止と患者の人権保障の在り方を提起した。 第二に、ハンセン病を理由とした特別法廷問題につき、ノルウェーの研究者、裁判官、弁護士らと研究会を開催し意見を深めることができた。井上が概要とこれまでの経緯、課題について報告し、ノルウェーからは日本における開廷場所に関する形式的、実質的な点への疑義が出され、課題を共有した。 第三に、研究テーマである隔離政策廃止後のハンセン病政策の課題は、私たちは現代的課題であり、障害福祉の地域移行支援にも共通する課題であると認識するに至った。2016年に起きた相模原「障害者」殺傷事件後の、施設再建と地域以降支援にも視野を広げ、現状を調査するとともにハンセン病問題との共通する課題を明らかにした。この点につき、鈴木が成果の一部を日本法政学会で報告した。2018年度には学会誌にて公表される予定である。 第一から第三までの実績については、最終年度にも引き続き調査研究を続け、考察を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に基づき、資料収集及び調査が順調に進んでいる。ノルウェー調査を実施し、現地聞き取りと資料収集に努めた。ノルウェー調査では、国内のハンセン病を理由とした「特別法廷」改定問題につき、現地研究者、裁判官らに報告し、議論を行った。現地研究者らの指摘から、日本の関連法制と人権救済に関する諸問題が明らかになった。また、継続して行っている現地では、ハンセン病家族や親族から聞き取りを行った。
国内では青森、群馬、東京、岡山にあるハンセン病療養所とともに、人権保障のための現代の開かれた入居施設の課題として、津久井やまゆり園事件に関する調査研究も開始した。ハンセン病を理由にした差別や偏見、劣等処遇、優生思想と社会保障法制のあり方につき、かなりの共通性がみられることがわかってきており、引き続き検討を行っていく。また、ハンセン病回復者の社会復帰後の課題を視野に、現代の生活保護問題等にも取り組んだ。成果の一部として、分担者が編者になり『社会保障レボリューション』(高菅出版・2017年)を公表した。
2016年度の統括と分担者が中心で行った学会報告は、今年度学会誌に掲載された。ハンセン病を理由にした「特別法廷」開廷問題を契機に、ノルウェーとの法制、療養所運営との比較を行い、人権保障のあり方と法学界の責任につき考察した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は最終年度であり、3年間の成果を出す予定である。 これまで研究分担者であった井上が、大学所属を離れるために研究分担者から外れるが、引き続き調査研究を続ける予定である。さらに、研究実績の概要で書いた「第三の成果」を引き続き検討するために、日本社会保障法学会学会員である木下秀雄(龍谷大学)、矢島里絵(首都大学東京)、金川めぐみ(和歌山大学)と連携して調査研究を進める予定であり、研究プロジェクトが1名体制になっても問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
複数回のノルウェー調査を予定していたが、先方の都合で延期した。2018年度に、ノルウェー調査を実施する予定である。現在、実施できる見込みであり、準備を重ねている。
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