研究課題/領域番号 |
16K03442
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
保条 成宏 中京大学, 法学部, 教授 (80252211)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの代理人 / 子どもの最善の利益 / 手続代理人 / 家事事件手続法 / 手続保障 / 職権主義 / 家庭裁判所 / 子の福祉 |
研究実績の概要 |
医療ネグレクトにおいて「子どもの最善の利益」を確保する存在として、あるべき「子どもの代理人」像を探求する過程において、2011年制定の家事事件手続法において導入された「手続代理人」制度について検討した。 家事事件手続法は 旧家事審判法が立脚していた「訴訟手続-当事者主義」「非訟手続-職権主義」という伝統的な「訴訟・非訟二分論」が破綻を来たし、「当事者権」の確立による「手続保障」が指向されていくなかで、そのための立法への気運の高まりを背景にしつつ制定されたものの、結果的には、後見的に「子の福祉」を実現するという従前の職権主義的な枠組を大きく組み替えるには至らなかった。そして、家庭裁判所がその後見的役割を発揮して子の利益が守られているかをチェックすることと一体のものとして、家庭裁判所の裁量判断を認めたうえで、家庭裁判所調査官の事実調査という補助手段を付与する、という職権主義的手続構造を温存するものとなっている。このような手続構造に内在するものとして成立した「手続代理人」制度は、これと不可分のかたちで規律される手続行為能力や手続参加の制度とともに、その運用が家庭裁判所の裁量に大きく委ねられることにより、職権主義的にもとづく後見的な「閉じた法システム」のなかに埋没し機能不全となりがちな構造となっている。 これに対して、「子どもの代理人」は、手続外に展開する実社会をも視野に入れ、そこに実在する客観的・実体的な「子どもの最善の利益」を代表し、子どもの「生の当事者性」を引き出しうるような「開いた法システム」の担体となるべき存在である。家事事件手続法における「手続代理人」の制度像は、そのようなあるべき「子どもの代理人」像とはおよそ相容れないものというほかない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
補助事業期間2年目の2017年4月に研究機関が福岡教育大学から中京大学に変更になり、この前後において、①研究資料の福岡教育大学から中京大学への移管・整理、②福岡教育大学の物品管理関係規程等により移管できなかった研究資料の再収集・整理、などにより当初計画の変更・遅延を余儀なくされた。そのため、2019年度が補助事業期間の最終年であったものの、研究の進捗に遅れが生じていたことから、補助事業期間延長承認申請を行い、承認された。しかしながら、2020年度においては、新型コロナウイルス感染拡大により、研究活動に対しさまざまな制約が生じるとともに、中京大学の授業におけるオンライン形式の導入・実施に伴い繁忙化し、十分な研究時間を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の延長が承認された2020年度においても、新型コロナウイルス感染拡大により、研究の進捗の遅れを十分には挽回できなかったことから、再度の補助事業期間延長承認申請を行い、承認されたところである。新型コロナウィルス感染拡大のなか、連携研究者・研究協力者との協働や、関係者への聞き取り調査が対面形式では困難となっており、電子通信手段等を最大限活用しつつ研究を進捗させることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間において研究課題の進捗に遅れが生じ、研究成果報告書をとりまとめ刊行するための作業を十分に遂行することができず、これに充てるべき経費が未執行となった。補助事業期間を2020年度に続き2021年度においても1年延長することが承認されたため、当該年度内に研究成果報告書を確実に刊行するべく、未執行額を使用することとしたい。
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