研究課題/領域番号 |
16K03443
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 寛 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30533286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 固定価格買取制度 / Feed in Tariff (FIT) / RPS / エネルギー法 / 日米比較 |
研究実績の概要 |
平成28年度は主として、わが国における再生可能エネルギーの固定価格買取制度について考察を行った。すなわち、わが国における発受電電力量のうちの再生可能エネルギー電気が占める割合は2014年度において12.2%(水力を含む)であるところ 、2015年7月に策定された2030年のエネルギーミックスにおいては、この割合を22~24%程度に伸長させて行くという目標が示された。この目標を達成するための手段として、わが国は現在、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年8月30日法律第108号)(2012年7月施行)に基づき固定価格買取制度を採用しているところ、一定の課題を踏まえて、平成28年5月に重要な改正が行われた(改正後の再エネ特措法を以下「改正再エネ特措法」という)。そこで、本研究においては、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の最近の動向について、改正再エネ特措法の内容を中心に考察を行った。制定・改正経緯を明らかにしたうえで、「新認定制度の創設」、「買取価格の決定方法の見直し」、「買取義務者の見直し等」、「賦課金減免制度の見直し」に分けて検討を行った。研究成果については、信州大学経法論集1号483頁以下(2017年3月)において公表した。 また、日米比較考察についても同時に遂行した。その過程において、アメリカ合衆国のエネルギー法に関して(再生可能エネルギーの普及にも関連する)、2016年に出された連邦最高裁判所の判決(FERC v. Electric Power Supply Ass'n, et al., 136 S. Ct. 760 (2016))に接した。そこで、当該判例の検討も行った。その研究成果は、平成29年度に、日米法学会の学会誌である「アメリカ法」において明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要の通り、平成28年度は主として、わが国における再生可能エネルギーの固定価格買取制度について考察を行った。研究成果は、拙稿「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に関する最近の動向―特別措置法の改正を中心に―」信州大学経法論集1号483頁~504頁(2017年3月)にて公表した。 また、日米比較考察の過程において、本研究課題に関連するアメリカ合衆国連邦最高裁判所の判決(2016年)を発見し、判例研究を行った。研究成果は日米法学会の学会誌である「アメリカ法」において公表予定である。 再生可能エネルギー法制の日米比較考察についても研究を遂行しており、平成29年度中に学術誌に公表する予定である。 以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
再生可能エネルギー法制の日米比較考察を継続して遂行する。再生可能エネルギーポートフォリオ基準(RPS)と固定価格買取制度(FIT)の在り方に関する総論的な検討は既に完了し、平成29年度に公表予定である。アメリカ合衆国の連邦法および同国のうち7州の制度を検討し、RPSとFITは排他的関係にあるのではなく、協働的関係にあって両立し得る制度であることを明らかにし、このことは日本においても妥当することを明らかにする予定である。 また、各論である個別の再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、地熱等)特有の法的課題について、更に研究を推進する予定である。これについては、文献調査および聴取調査により、研究を進め、平成29年度から平成30年度にかけて論文を作成・公表することを計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、再生可能エネルギー法制に関する総論的な検討(日米比較考察を含む)を行ったことから、個別の再生可能エネルギー(太陽光、風力、中小水力、地熱)に係る法的課題に関する研究を遂行するには至らなかった。そのため、未使用額(次年度使用額)が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額とあわせて文献収集費用、文献複写費用、出張旅費に充てる計画である。
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