研究課題/領域番号 |
16K03443
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 寛 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30533286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / FIT / RPS / アメリカ合衆国 / 州法 / 太陽光 / 風力 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、再生可能エネルギー法制の日米比較考察を総論と各論に分けて行った。まず総論として、アメリカ合衆国における再生可能エネルギー法制の下での再生可能エネルギー基準(Renewable Portfolio Standards)(以下「RPS」という)と固定価格買取制度(Feed-in Tariff)(以下「FIT」という)の関係性について考察を行った。今後のわが国の対応として、「FITによって再生可能エネルギー導入が飽和状態になったときはRPSに戻ることが検討されるべき」との指摘がある(大塚直・法時84巻10号46頁(2012年))。これに対して、アメリカ合衆国の複数の州においては、RPSとFITが補完関係にあることが認められた。そこで、アメリカ合衆国の再生可能エネルギー法制(特に7つの州の制度)を考察の対象としながら、わが国における今後の再生可能エネルギー法制について、RPSとFITの関係性を中心に検討を行い、一定の示唆を見出すことを試みた(法学研究90巻10号37頁~91頁(2017年10月)・同90巻11号37頁~77頁(2017年11月))(すなわち、FITからRPSに全体的に戻るというよりも、RPSを再導入したうえで、(各再生可能エネルギーのうち一部ではあっても)FITをRPSの目標を達成するための補完手段として位置づける(両者の関係を相互補完的にとらえる)ことも考えられる)。 また、各論として、太陽光および風力に着目して、アメリカ合衆国と日本の近時の動向と法的課題について比較研究を行った。法的課題として、太陽光については環境影響評価、連邦エネルギー規制委員会、立地上の問題などを明らかにし、風力については、送電、生態系に対する影響、騒音・視覚的問題などを明らかにして、考察を行った(信州大学経法論集3号1頁ないし49頁(2018年3月))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要の通り、平成29年度は再生可能エネルギー法制の日米比較研究を遂行し、2点の研究論文と1点の研究報告を行った。すなわち、総論として、(1)拙稿「アメリカ合衆国の再生可能エネルギー法制に関する考察(1)(2・完)―RPSとFITの関係性を中心としたわが国への示唆―」法学研究90巻10号37頁~91頁(2017年10月)・同90巻11号37頁~77頁(2017年11月)を発表した。 また、各論として個々の再生可能エネルギー特有の法的課題の研究を行い、(2)拙稿「アメリカ合衆国における再生可能エネルギーの普及促進に関する近時の動向と法的課題(1)―太陽光・風力を中心とした日本への示唆―」信州大学経法論集3号1頁~49頁(2018年3月)を発表した。総論のみならず、各論の研究にまで到達できたことから、本研究は順調に進展している。 さらに、(3)2017年9月24日に、オーストラリア国立大学・中央大学・早稲田大学・慶応義塾大学が主催するJapan-Australia Dialogue on Energy Policy & Regulation 2017において、「Can RPS and FIT coexist? - Implication from the U.S. Law of Renewable Energy -」と題する研究報告を行う機会が与えられた(英語)。これは、上記(1)の研究論文に基づき、口頭報告を行ったものである。 このように必要十分な研究業績を発表することが出来たことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、各論として、太陽光および風力に着目し、アメリカ合衆国と日本の近時の動向と法的課題について比較研究を行った。 平成30年度は、残る水力、地熱およびバイオマスに着目した比較研究を行う予定である。水力および地熱については、平成30年10月頃を目途に研究成果を発表する予定である。 また、個々の再生可能エネルギーに着目した比較研究を終えた後は、エネルギー使用の効率化に関する日米比較考察を行う予定である。 さらに、再生可能エネルギーについては、アメリカ合衆国においても日本においても複数の紛争事例が存在する。そこで、関連する裁判例を調査し分析する研究も行うことを予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、個別の再生可能エネルギーに係る法的課題に関する研究を行ったが、主として太陽光及び風力に注視し、水力、地熱及びバイオマスに係る研究は平成30年度に持ち越すこととなった(水力及び地熱については平成30年10月頃に研究発表を予定している)。また、アメリカ合衆国の本土のうち東海岸における再生可能エネルギーの動向に注視した(西海岸の動向については今後の課題)。そのため、未使用額(次年度使用額)が生じたものである。 平成30年度請求額とあわせて文献・情報収集費用、文献複写費用、出張旅費等に充てる計画である。
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