研究課題/領域番号 |
16K03445
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
張 睿暎 獨協大学, 法学部, 准教授 (80434231)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 著作権登録 / 著作権 / 権利情報 / データベース / コンテンツ流通 |
研究実績の概要 |
オンライン著作権市場成長の障害となっている煩雑な著作物利用許諾の手続きを簡素化し、利用を促進するためには、まず、著作権情報統合DBの構築が必要であるところ、日本においてはそのような統合DBが存在しない。文化庁が運用している著作権登録制度は、信頼性はあっても網羅的ではなく、時間や費用がかかる。また、著作権信託管理団体やその他の民間データベースは、対応する著作物の種類や利用様態が限定されており、部外へは非公開であるなどの限界がある。著作権制度における無方式主義を克服し、統合的な著作権情報DB構築のためには、コンテンツの種類や利用様態をまたがる網羅性のある著作権情報データを集約し、かつ、それら情報の信頼性を確保して公開しなければならないが、課題は多い。 本研究は、1)諸外国における権利情報DBや公的著作権登録制度の運用状況および法的課題を調査・分析し、2)日本における著作権情報統合DB構築の制度的障害を把握し、官民の役割新たな制度の法的仕組みを見出すための一定の示唆を提供することで、コンテンツ流通促進のための法的制度設計に役立とうとするものである。 3年予定の本研究では、米・韓・仏・独の4ヶ国に焦点をあて現地調査を行うこととしているが、初年度の研究調査では、まず米国および韓国に行き、研究調査を実施した。 米国および韓国での現地調査の結果、米韓における著作権登録制度の現状と運用実務を把握することができた。とりわけ、米韓の調査結果を踏まえ、著作権権利情報DBとの連携可能性をまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象4ヶ国(米・韓・仏・独)のうち、2ヶ国における海外調査を実施した。 平成28年11月の米国(ワシントンDC)現地調査では、米国著作権局(the Copyright Office)、議会図書館著作権課(Library of Congress Copyright Office)等の関連機関や現地研究協力者を訪問して、調査論点に関するヒアリングを実施した。公的著作権登録制度の詳細な現状や、かかる運用上の課題等に関する貴重な情報を得ることができた。現在、現地調査内容を踏まえて、米国の著作権登録制度に関する紹介論文を執筆中である。 平成29年3月の韓国(ソウル)現地調査では、韓国著作権委員会、文化体育観光部、韓国音楽著作権協会等の関連機関や現地研究協力者を訪問して、調査論点に関するヒアリングを実施した。韓国現地調査の結果を米国調査内容と合わせて分析し、更に比較法の観点から日本の状況と比較・検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年4月~8月には28年度の成果を踏まえ、2年次調査対象国(仏・独)における著作権情報DBおよび公的著作権登録制度の導入の現状、かかる運用上の課題等の追加的な文献を調査する。 9月~11月頃にフランス(パリ)およびドイツ(ミュンヘン)現地調査に出向き、両国の著作権庁や民間団体等の関連機関、現地研究協力者を訪問して、調査論点に関するヒアリングを実施する。フランスにおけるソフトウェア利用権登録、映像著作物の抵当権登録、ドイツにおける無名・仮名著作権登録簿制度など、仏独の著作物登録の実務を把握する。 12月~3月にはフランス及びドイツ現地調査現地調査の結果と合わせて日本の現状を分析し、更に比較法の観点から日本の状況と比較・検討し、29年度までの成果を中間報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国および韓国への現地調査の際の航空券を格安で購入できたため、予算より旅費を抑えることができた。また、研究図書の一部を、紙書籍より廉価の電子書籍フォーマットで購入したため、予算より物品費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、2年次調査対象国であるフランスおよびドイツ現地調査の旅費に当て、直行便や到着時間の早い航空便の購入など、効率によい現地調査の実施に利用する予定である。
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