オンライン著作権市場成長の障害となっている煩雑な著作物利用許諾の手続きを簡素化し、利用を促進するためには、まず、著作権情報統合DBの構築が必要であるところ、日本においてはそのような統合DBが存在しない。文化庁が運用している著作権登録制度は、信頼性はあっても網羅的ではなく、時間や費用がかかる。また、著作権信託管理団体やその他の民間データベースは、対応する著作物の種類や利用様態が限定されており、部外へは非公開であるなどの限界がある。著作権制度における無方式主義を克服し、統合的な著作権情報DB構築のためには、コンテンツの種類や利用様態をまたがる網羅性のある著作権情報データを集約し、かつ、それら情報の信頼性を確保して公開しなければならないが、課題は多い。 本研究は、1)諸外国における権利情報DBや公的著作権登録制度の運用状況および法的課題を調査・分析し、2)日本における著作権情報統合DB構築の制度的障害を把握し、官民の役割新たな制度の法的仕組みを見出すための一定の示唆を提供することで、コンテンツ流通促進のための法的制度設計に役立とうとするものである。 3年間実施された本研究では、文献調査ならびに、米国・カナダ・ドイツ・韓國・中國への現地調査を実施し、音楽分野を中心に、著作権情報の登録・管理実務を把握することで、課題を確認することができた。調査内容と分析は、年度別に研究発表をしている(後述の研究実績を参照)。 なお、近時のブロックチェーン技術を用いた著作権証明サービスやコンテンツ取引サービスの登場は、「網羅性のある著作権情報データを集約」、「透明な使用料の配分」するという意味で興味深く、「コンテンツ流通促進のための著作権情報統合DB構築と著作権登録制度の活用」という両方の観点で大きな示唆を得ることができ、新たな研究テーマにもつなげることができた。
|