研究課題/領域番号 |
16K03446
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森本 直子 昭和女子大学, 総合教育センター, 准教授 (40350425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医事法 / 生命倫理 / 人体利用 / 手続保障 |
研究実績の概要 |
死体利用に関する手続保障のあり方を検討するために、まず死体利用に関する現行法である臓器移植法、献体法、死体解剖保存法の各法が対象としている死体利用の射程を確認し、それぞれが死体利用の実施を誰に対してどのように通知されるべきもの、誰の承諾をどのように取得すべきものと規定しているかを検証した。 その結果、現行法には生前の本人意思を尊重するアプローチだけでなく、遺族の意思にも配慮する傾向が見られ、二つのアプローチの併存が確認された。これは生前の私事、とりわけ医療をめぐる選択については患者本人の自己決定権が尊重されるべきとの考え方が法的にも社会的にも確立し、認識されるようになっていることとは対照的である。死後の問題となる死体利用については、本人の生前の意思に対して絶対的優位性が認められていない点は興味深い。 承諾の形式については、承諾(YES)を表示する方法と拒否(NO)を表示する方法のそれぞれが、こうした問題について積極的に行動しない社会の大多数を占める人々にどのような影響を与えるか、またそれは死体利用に対するその社会の方針としてどのような意味をもつか、を検討した。 承諾を表示する方法を採る社会では沈黙が拒否とみなされるのに対し、拒否を表示する方法を採る社会では沈黙が承諾とみなされる、したがって、死体利用の機会を増やす結果が見込めるのは後者である。しかし、沈黙を承諾とみなすためには、その前提として死体利用についての社会的合意が必要であり、それを欠いたまま沈黙を承諾とみなす取り扱いは欺罔であり、手続保障の面から問題がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夏期休暇期間中に実施を予定していた北米・北海道での調査等の研究活動が、研究代表者の個人的事情から実施できず、延期されたため。
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今後の研究の推進方策 |
比較法的な検討については、昨夏に予定していた北米での調査を今夏にあらためて設定し直して実施し、遅れを挽回する。また、国内の状況について現行法の射程を外れるカダヴァー・トレーニング等の死体利用の例について文献により情報収集し、それらがどのようなルールに基づいて実施されているかを明らかにするため、国内の実施団体である特定非営利法人メリ・ジャパン(名古屋市)を訪問して聴き取り調査・情報収集を行う。アイヌの人骨利用問題についての北海道での聴き取り調査・情報収集も合わせて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度夏期に実施を予定していた北米・北海道での調査が、研究代表者の個人的事情要から実施できず、延期された。このため当該調査旅費と関連の謝金・物品購入として予定した分が使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度夏期に北米・北海道での調査を再計画し、2016年度夏期に予定していた分の調査を実施する。
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