研究課題/領域番号 |
16K03446
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森本 直子 昭和女子大学, 総合教育センター, 准教授 (40350425)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 医事法 / 生命倫理 / 人体利用 / 手続保障 |
研究実績の概要 |
米国東部(ボストン・ニューヘブン・ニューヨーク)において、死体利用の実態に関する調査を実施した。 まず、博物館での死体利用をめぐって、Harvard大・Yale大の自然史系・医学系附属博物館や国立アメリカンインディアン博物館を訪問し、人体標本や先住民墓地関連の展示を見学し、死体ないしはその一部分である所蔵品の取り扱いと収集・所蔵・展示・返還について情報を収集した。特に、Yale大付属自然史博物館であるPeabody Museum等の先住民関連所蔵品返還担当の職員を始めとする実務担当者へのインタビュー調査(一部は立地の都合から電話インタビュー調査)では、事前の関連文献調査から得られていた対立的(confrontational)な印象とは異なる、博物館・科学コミュニティ(死体を利用する側)と先住民部族(死体=先祖の遺骨を利用される側)の間の関係性と死体利用をめぐる両者の歩み寄りの可能性を確認することができた。また、さらなる情報源や関連文献の紹介を受けた。 次に、外科手技の研修のための死体利用をめぐっては、事前にインターネットを通じて調べた情報をもとに、そうした研修の場を提供するニューヨーク市内の民間ラボと連絡をとり、現地を訪問・見学し、担当者インタビューを実施した。こうした研修ラボは当初の予想に反して、バイオバンクとの連携の下で運営されており、生前の本人や遺族とのやりとりには一切かかわっていないことが判明した。利用の許諾に関わる手続部分に関心がある場合は材料となる人体の供給元であるバイオバンクへの聴き取り調査が必要であることが理解できた。研修はビジネスとして展開されており、この分野の分業体制を知ることが叶った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はH28年度夏季休暇期間に実施予定だった国外調査については、H29年度夏季休暇期間の国外調査の期間を長くとることで実施・挽回できたが、国内調査(名古屋・北海道)については日程が確保できず、延期されたため。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度夏季に実施した渡米調査・資料収集の結果、あらたに生じた課題として、①外科手技研修のための死体を収集するバイオバンクについて、②先住民人骨の返還に関するより多くの経験を有する博物館について、それぞれさらなる情報収集を行い、結果をまとめる。 北海道(アイヌ人骨の返還問題)と名古屋(外科手技研修=カダバー・トレーニングを推進する整形外科医団体)で計画している聴き取り調査と資料収集をH30年度夏季に実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H28年度夏季に実施予定であった海外調査をH29年度夏季に実施した結果、H29年度中に実施予定であった名古屋・北海道での国内調査の日程が確保できず、延期された。このため、当該調査旅費と関連の謝金・物品購入分の予算が執行できなかったため。これらの国内調査については、H30年度夏季にあらためて計画・実施する。
|