研究実績の概要 |
最終年度の2019年度は、前回2017年度の米国での調査において先方とのスケジュール調整がつかず実現しなかった分として、古人骨の発掘調査とそこでの先住民族との対立問題に詳しい考古学研究所(Andover, MA)の研究者へのインタビュー調査を行った。また、前回の調査後に比較検討の必要性から追加で計画した分として、カダバートレーニングを実施する外科手技研修ラボ(New York, NY)の技官と、古人骨の調査をめぐって先住民族と協働経験を有する大学文化人類学研究室の研究者(New Haven, CT)を対象とするインタビュー調査を実施した。 国内調査については、カダバートレーニングを推進するNPO法人(名古屋市)の担当者と連絡がつき、メールでのやりとりを通じて情報を整理した後、インタビュー調査を計画しようとしたところ、折悪しく新型コロナウイルスの感染問題が愛知県で報じられため、断念した。このやりとりの中で、国内でのカダバートレーニングの主体が大学解剖学教室であり、遺族とのやりとり等本研究課題が関心を寄せる論点については、そちらに情報照会が必要であると判明した。トレーニングの実施運営をサポートするNPO法人との役割分担が明確になったため、併せて提携先大学の解剖学教室の訪問調査も併せて計画しつつあったが、前記の理由で実現しなかった。 研究期間を通じて、法律文献や判例から読み取れる死体利用をめぐる推進派と反対派の対立の構図・イメージが、死体利用に関する実務家への聴き取り調査によって、より「歩み寄り可能」な、協働的関係にもとづく構図・イメージへと変化・修正された。これは過去における厳しい対立関係を起点に、賛成・反対とは異なる第三の道を探る実務レベルでのすり合わせ・交渉から編み出されたものと考えられる。
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