研究課題/領域番号 |
16K03447
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
和田 幹彦 法政大学, 法学部, 教授 (10261942)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 生命工学 / 生殖工学 / 人工生殖 / ELSI / 法学 / 法と生命倫理 / 同性婚 / ヒト胚のゲノム編集 |
研究実績の概要 |
1)最大の実績は世界超一流かつ発表者を厳しく絞り込む(総勢100人程度)ことで有名な”Gordon Conference on Germlinal Stem Cell Biology”に招待され、「招待の条件」として本研究の学会発表を行ったことだ。本研究開始のきっかけの論文の著者、英国Cambridge大学の入江奈穂子・博士研究員、彼女の研究室長のAzim Surani博士はじめ、この動物発生学分野の世界的著名な研究者も参加、本研究に対して、的確な批判・意見を受けたのは大きな実績である。 2)「日本分子生物学会・生化学会*」の本研究の学会発表でも第一線級の専門家からも積極的なコメントを受けた。(*今年は合同;総勢5,000人ほど:ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授、大隅良典教授もゲスト・スピーカー)自然科学研究におけるELSI即ち”Ethical, Legal and Social Implications”を専門とする東京大学医科学研究所の武藤香織教授が和田の発表に的確な意見・批判を下さった。 3)オーストラリアを訪れ、メルボルンでは「生命倫理学発祥の地」であるモナッシュ大学の生命倫理センター長のDr. Michael Selgelid等、同大学の4人の教授に本研究者の研究の画期的側面をアピールでき、意見交換した。台北大学医学部准教授兼「台湾『精神医科学と法』研究所」所長のKevin Wu(呉建昌)MD, LLB, LLM, PhDという学際研究の第1人者にも本研究者による本研究の革新性をアピールし、コメントを頂いた。「デザイナー・ベビー」は、問題の現時点の「世界の中心的発信地」のラボがある広州市にて、ラボの第1人者と情報交換した。ソウル・ホーチミン・バンコク・クアラルンプール・シンガポールの大学で生命倫理の教授たちと本研究の先端的生命工学問題の現地の受容度をヒアリングもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学術振興会サイドでは周知のとおり、本研究の初年度平成28年度は、4月1日ではなく、10月21日の交付決定となった。そのため、初年度の研究進展のための時間は12か月ではなく5か月のみであった。その7か月の遅れを考えると、2年度目である平成29年度の本年度の進捗は、上記の【研究実績の概要】を考慮すれば、おおむね順調に進展している、と考えている。 具体的には、当初の計画通り、法政大学にパソコンを設置し、インターネットによる英文トップジャーナルの論文を読み進めて熟読している。また、当初の予定通り、「デザイナー・ベビー」と「同性間の実子」を双方が新法学領域「法と遺伝学」に含まれる最新のテーマであることを強調し、国際学会での英語での発表を行うことができた。 また、本テーマでの研究発表には至らなかったが、当初の予定通りHuman Behavior and Evolution Society(国際学会)に2017年6月に参加し、会議の参加者と本テーマにつき、貴重な意見交換をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年4月に、中国の広州の大学を中心とする研究室で、「生き延びられるヒト胚のゲノム編集」実験が行われた成果がTan et al. 2017, Mol Genet Genomicsというかなりメジャーな専門誌で公刊された。 こうした動きを考えると、当初は和文・英文双方の論文で、本研究の公刊を予定していた3年度目の平成30年度であるが、【進捗状況】にも記した通り、本研究者の責めに拠らない事情から研究の時点が7か月遅れていること、今後も特に「デザイナー・ベビー」はTang et al. 2017を勘案すると中国でさらなる「進歩」が予想されること等から、この前半の「デザイナー・ベビー」のテーマも、また後半の「同性間の実子」についてもイスラエルのDr. Hannaが当初予測したように2016年12月までにヒトの男性iPS細胞から卵子を作ることには成功してない経緯を踏まえて、今年度平成30年度の前半は、このパラレルな2つのテーマの最先端の自然科学的進展を見守り、その上で後半には和文・英文の論文執筆と完成を目指す計画である。 この後の具体的な推進方策としては、中国・広州大学を中心とする、ヒト胚のゲノム編集実験の発展を注意深く見守る必要がある。いつ公刊されても不思議ではない、次のステージの研究に備えて今までの文献の内関連がやや浅いものまで渉猟して準備態勢を整え、次の新たな局面に備えておきたい。また、具体的にヒト胚のゲノム編集のみならず、これに連動するELSI(倫理的、法的、社会的諸問題)の論文は英語でも多々出ており、これをしっかりフォローし熟読することにより、今後の本研究の推進方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術振興会サイドでは周知のとおり、本研究の初年度平成28年度は、4月1日ではなく、10月21日の交付決定となった。そのため、初年度の研究進展のための時間は12か月ではなく5か月のみであった。その7か月の遅れのため、初年度(平成28年度)の予算は全額を使い切ることができず、相対的に多額が平成29年度に繰り越され、同様の理由で平成29年度の予算は全額を使い切れずに、1年前とは相対的には少額が、平成30年度に繰り越された。また、【今後の研究の推進方策】にも明示したとおり、冒頭の7か月の遅れもあって、平成30年度は和文・英文の論文執筆のみならず、その前に、必須となる研究(中国のDr. Tang・イスラエルのDr. Hannaの業績をフォローする必要がある)に注目していく費用などを考えると、次年度使用額が当初予定より増えたのは、やむを得ない。 次年度の使用計画:設置が遅れていた法政大学研究室へのデスクトップ型パソコンを購入し、ノート型パソコンではできない大量の関連論文のデータの処理・整理を行う。次に、これも遅れていたタブレット端末を購入し、研究室以外の大学構内で、電子媒体の文献を熟読する。法政大学では、和田研究室以外でも図書館等で、関連文献熟読のため持ち歩けるタブレット端末を購入し、研究室に在室していない時間中にはこれらのパソコン・端末を利用することにより電子媒体の文献を同様に熟読する。
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