研究課題/領域番号 |
16K03451
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高嶌 英弘 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (70216646)
|
研究分担者 |
坂東 俊矢 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (40189733)
野々山 宏 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (80388016)
中田 邦博 龍谷大学, 法学部, 教授 (00222414)
草鹿 晋一 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (30327118)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 消費者法 / 消費者法教育 / 消費者教育 / 消費者市民社会 / 消費者教育の推進に関する法律 / 消費者教育推進法 |
研究実績の概要 |
本研究の第1の目的は,従来の消費者法教育の内容と到達点を明らかにする点にあり,第2の目的は,消費者法教育の全体的体系を提示し,個々の教育内容の位置づけを明らかにする点にある。これらの目的を達成するため,平成28年度においては,計6回にわたり,以下の内容で研究会を開催した。その際に留意した点は,消費者と事業者という社会構造に起因して生じる問題を包括的に対象とすること,及び関連する多分野の専門家を招聘して最新の状況を明らかにすること,である。 第1回:消費者教育と消費者法教育の関係,従来の消費者教育及び消費者教育の概要 第2回:食品表示の現状と問題点,食品関連の法令の現状と問題点 第3回:機能性表示食品制度の現状と問題点 第4回:消費者政策と消費者法教育の関係,従来の消費者市民教育の概要 第5回:環境教育及び環境法の現状と問題点 第6回:公害と消費者法の関連,消費者による企業コントロールの手法 上記研究の成果として,従来の消費者法教育は全体の体系化が意識されておらず,その内容も必ずしも統一されていないことが明らかになった。具体的には,消費者と事業者という社会構造に起因して生じる問題点の全てが従来の消費者法教育で対象とされてきたわけではないこと(公害問題,労働問題などが典型例),逆に,上記社会構造に起因しない問題が消費者教育の内容に取り込まれていること(道徳教育等),消費者教育と消費者法教育の区別が必ずしも意識されていないことが挙げられる。 併せて,消費者ネット関西等の消費者団体や滋賀県消費者センター等の地方自治体と連携しつつ,消費者法教育を内容とした講演を数回にわたって実施するとともに,その際の手法や内容について意見交換を行った。当該活動の結果として,消費者法教育を効果的に進めるためには,関係団体と緊密に連携し,対象者の状況とニーズを適切に把握する必要があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がおおむね順調に進展していると評価しうる第1の理由として,本研究の第1の目的たる従来の消費者法教育の内容と到達点の明確化については,研究会及び関連団体との連携活動によって,平成28年度中にほぼ目的を達成できたことが挙げられる。とりわけ,従来,それぞれ個別に議論され個別に教育が実施されてきた多数の分野(食品問題,環境問題,公害問題,消費者政策,消費者市民社会における市民による企業コントロールの手法)を,消費者法教育という視点から統一的に検討する機会を持ち,それぞれの専門家との間で意見交換できたことは本研究の最終的な成果につながる重要な作業であった。 ただし,消費者法教育と密接に関連する分野のうち,法教育,情報教育,食育については,関連する専門家の招聘が日程的に困難であったため,平成29年度に実施することになった。 第2の理由として,消費者団体,地方自治体,大学と今後連携して活動するための合意がほぼ確立できた点が挙げられる。消費者法教育の研究は,とりわけ実際の教育活動からのフィードバックが重要な領域であるため,各種の消費者関連団体との連携・協力が今後の研究の進展のためには必要不可欠であるところ,平成28年度中に,消費者ネット関西,滋賀県,京都産業大学法教育総合センターと,今後の連携に向けて協議し,今後の協力関係を合意することができた点は,本研究の最終的な成果につながる重要な要素である。 なお,当初,平成28年度に実施を予定していた各種団体における消費者法教育の状況調査については,関連する全分野の検討後に調査項目を確定するのが適切であると判断し,平成29年度にずらして行うことになった。調査の実施に向けた各種団体の協力はすでに依頼済である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,昨年度に実施できなかった法教育,情報教育,食育のそれぞれの領域について,現状と問題点を明らかにするために,各1回ずつ研究会を実施する予定である。これらの研究会における報告者については,既に関連する各分野の専門家に報告を依頼し,内諾を取得済である。 併せて,消費者ネット関西等の消費者団体や滋賀県等の地方自治体と連携して,各種の消費者団体における従来の消費者教育の現状と問題点を明らかにするための実施調査を行う予定である。具体的には,NPO関係者,消費生活相談員,地方自治体の職員等から聞き取り調査を行うとともに,調査結果をもとにして,教育内容,教育メソッド,担当者や教材などについてどのようなニーズがあるかを明らかにする予定である。 次に,本研究の第2の目的たる消費者法教育の全体的体系の提示及び個々の教育内容の位置づけの明確化については,上記3分野の検討後に研究会で報告のうえ,論稿に取りまとめて平成29年度中に公表を予定している。具体的には,民事法研究会出版の雑誌『現代消費者法』に掲載予定である。 さらに平成29年度においては,ドイツ及び北欧諸国における消費者法教育の理念及び具体的な教育内容と教育メソッドを調査することが予定されている。調査対象機関は,現在検討中であるが,いくつかの機関からは既に調査協力の内諾を得ている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では,平成28年度に法教育,情報教育,食育の各分野についてもそれぞれ1回ずつ各分野の専門家を招聘して研究会を開催する予定であったところ,招聘者との関係で日程が調整できなかったため,平成29年度に延期することになった。そのため,当該研究会の開催費用が次年度に繰り越されることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定の第1回研究会(食育),第2回研究会(情報教育),第3回研究会(法教育)のそれぞれにつき,研究会開催費用として使用する予定である。
|