研究課題/領域番号 |
16K03451
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高嶌 英弘 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (70216646)
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研究分担者 |
坂東 俊矢 京都産業大学, 法学部, 教授 (40189733)
野々山 宏 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (80388016)
中田 邦博 龍谷大学, 法学部, 教授 (00222414)
草鹿 晋一 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (30327118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 消費者法 / 消費者法教育 / 消費者教育 / 消費者市民社会 / 消費者教育の推進に関する法律 / 消費者教育推進法 / EU消費者法 / EU消費者法教育 |
研究実績の概要 |
本研究の第1の目的は、従来の消費者法教育の内容と到達点を明らかにする点にあり、第2の目的は、消費者法教育の全体的体系を提示し、個々の消費者教育内容の位置づけを明らかにする点にある。これらの目的を達成するため、平成29年度においては、計8回にわたり、以下の内容で研究会を開催するとともに(以下の表記は、平成28年度からの通算回数)、EU委員会、ヨーロッパ消費者センター等を対象とした海外調査を実施した(平成30年3月21日~29日)。 第7回:海外調査対象機関の事前調査と質問項目の確定 第8回:学部教育における法律関連データベースに求められる機能とコンテンツ 第9回:消費生活相談員がSNSを通じ感じた消費者教育の必要性、滋賀県の消費生活相談・消費者教育の現状と課題 第10回:大学における消費者教育講座の創設と運営-行政の立場から 第11回:小学校における食育授業の理念と現状、食の安心安全教育、子ども食堂の現状と課題 第12回:EU及び北欧における消費者法教育の状況 第13回:ロースクールにおける情報法授業の現状と課題、LINEのご紹介と各種対策について 第14回:EUにおける消費者法教育調査報告、今後の学部教育における法律関連データベースと教学システムの意義と機能 今年度はまず、昨年度に予定していたが報告者の日程が確保できなかったため延期していた法教育、情報教育、食育につき研究会を開催し、各分野における教育理念及び現状と課題を明らかにした(第8回、第9回、第11回、第13回、第14回)。併せて、海外調査の準備及び調査結果を踏まえて、ヨーロッパにおける消費者法教育の現状と課題を明らかにした(第7回、第12回、第14回)。さらに、従来の検討結果を踏まえたうえ、大学における消費者教育講座の現状と課題、及び地方自治体における消費者教育の現状と課題を明らかにした(第9回、第10回)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がおおむね順調に進展していると評価しうる第1の理由として、本研究の第1の目的たる消費者法教育の内容と到達点の明確化については、本研究会及び関連団体との連携活動によって、平成29年度中に、昨年度の積み残し課題を達成できたことが挙げられる。即ち、昨年度中に実施できなかった法教育、情報教育、食育の分野について、大学教員、企業家、消費生活相談員、食育関連団体所属者など、実際に教育の現場で活動している報告者と意見交換を行い、消費者法教育という視点からこれらの実践活動を包括的に把握しなおす機会を持つことができた。この成果については、2018年度中に、雑誌「消費者法ニュース」誌上において連載することが決定している。 第2の理由として、昨年度、今後の研究連携を合意した諸団体(滋賀県、消費者ネット関西、京都産業大学法教育総合センター)との関係において、アンケートや聞き取り調査、公開研究会の共同開催など、研究成果につながる共同作業を進めることができたことが挙げられる。滋賀県消費者センターにおいては、センターに所属する消費生活相談員を対象とした聞き取り調査を実施することができた。また、消費者ネット関西においては、同団体の理事及び評議員を対象として、消費者法教育についての聞き取り調査とアンケートを実施することができた。これらの調査結果については、今後、とりまとめて公表予定である。 第3の理由として、ヨーロッパにおける消費者法教育の理念と現状を明らかにできたことが挙げられる。とりわけ今回の調査旅行では、EU委員会の消費者法教育担当者及び司法・消費者担当局の法務担当者等と面談し、EUの消費者政策、規則、指令の周知啓発、教育のためにどのようなプラットフォームを構築しているかを調査できた。これらの調査結果は、今後のわが国における消費者法教育のシステムを考えるうえで重要な意義を有すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度における研究の第1の推進方策として、従来の研究及び調査結果のとりまとめと公表に向けた検討会を随時開催するとともに、「消費者法ニュース」、「現代消費者法」等の誌上で成果を公表することが挙げられる。とりわけ、従来の研究会における報告内容については既に多くの論稿が揃っており、平成30年度中に、順次、消費者法ニュースに掲載予定である。 第2の推進方策として、平成29年度に引き続いて諸外国における消費者法教育の調査及び関連機関との研究協力を進める点が挙げられる。平成30年度は、ヨーロッパ以外の地域、とりわけアメリカにおける消費者法教育の現状調査及び他国研究者との意見交換の機会として、平成30年5月にアメリカで開催される消費者法教育会議(Teaching Consumer Law Conference)に坂東教授が参加することが決定しており、この成果についても今年度中に公表予定である。また、平成29年3月に実施したヨーロッパ調査では、EU委員会関係者、ヨーロッパ消費者センタールクセンブルクセンター長、ルクセンブルク国立消費者メディエーター、ルクセンブルク大学消費者法担当の Elise Poillot教授らと意見交換の機会を得られたところ、平成30年度もEメール等で意見交換を継続し、ヨーロッパの近時の動向を紹介する予定である。 第3の推進方策として、消費者法教育の関係者が広く参加できるシンポジウム形式で研究会を開催することにより、本研究の成果を広く社会に還元するとともに、関連する諸分野の研究者等との間で意見交換を行う点が挙げられる。 さらに、上記3点の方策の成果を踏まえたうえ、研究会メンバーの分担執筆によるスタンダードな消費者法教育のテキスト作成に向けた検討を進める予定である。本テキストの出版については法律文化社から内諾を得ており、平成30年度中の公刊が目指されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年5月にアメリカで開催される消費者法教育会議(Teaching Consumer Law Conference)への坂東教授の参加が決定したので、この旅費を確保するため一部の研究費を次年度に繰り越すこととした。繰り越し分は、坂東教授の旅費に充てられる。
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