1 概要…本研究は4年計画で実施するものであり、本年度はその最終年に当たる。交付申請書の「実施計画・方法」によれば、本年は、1)機能等の特性から他者の使用が容認される商品デザインに関する問題(本研究の4つの個別テーマのうちの④に当たる)について成果の発表、2)個別テーマ①~④の考察結果を総合して分析・検討を行い、成果を発表する、ことになっている。昨年、④に関する判例評釈を公表したが、本年の第一の取り組みとして、さらにこの問題の分析を続けることとした。そのため、必要な資料の収集・整理、企業実務家や弁護士、研究者に対するヒアリング、研究会への出席等を行った(その具体的成果については「2 本年度の具体的成果」参照)。 最終的に補助事業期間全体を通じて、本研究テーマの個別テーマのうち、上記④および、「著作権法と意匠法の棲み分けの問題」(テーマ①)、「商品デザインを商標法で保護することの問題」(テーマ②)について論文、判例評釈等の具体的成果を公表した。テーマ②の「規制の根拠を『混同』に求めるのか『不正使用』に求めるのか」については未検討であるものの、上記一連の成果から、本研究課題である商品デザインの法的保護に関する諸問題のポイントおよびその解決の方向性が一定程度、明確となったと思われる。 2 本年度の具体的成果 (1)具体的成果:「衣装の形態における『実質的同一性』(不正競争防止法2条5項)の判断」L&T84号45頁(2019年7月) (2)内容・意義:本稿は、商品デザインの具体例として衣装の形態に焦点を当て、不正競争防止法2条1項3号との関係で論じたものである。関連する過去の判決例をほぼ網羅的に分析検討し、商品デザインを本3号によって保護する際に法的評価のポイントとなる「実質的同一性」に関する諸問題を検討し、明らかにした。
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