研究課題/領域番号 |
16K03457
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 幹根 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (30295373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公共政策 / 政府間関係 / タバコ規制政策 / イギリス / スコットランド / 条例 / 地方自治体 |
研究実績の概要 |
先ず、イギリスにおけるタバコ規制政策の立案と執行方法が、規制内容によって異なっている実態を分析した。パッケージ表記に対する規制は、EUタバコ製造に関する指令に準拠する形で導入された。タバコ陳列の規制は、イングランドがタバコ広告と販売促進に関する規則を改正して禁止し、ウェールズ、北アイルランドも同様の規則が適用された。スコットランドでは、同内容の法律を独自に立法化して規制を行った。喫煙者に対する禁煙支援治療は、それぞれの議会・政府に権限移譲されている保健医療サービス(NHS)によって執行されている。このように、タバコ規制内容によって、政府間関係が複層化している。 また、スコットランドでは2018年5月、アルコール最低価格販売に関する法律が施行された。その後、ウェールズ議会はスコットランドと同内容の法律を可決させ、2019年に施行する予定であり、水平的な次元で新たな規制政策が波及している。 日本では2018年7月、国が健康増進法を改正し、全国レベルでの規制政策が実施された。その結果、自治体間の政策内容の差異が解消され、全国レベルで規制水準が画一化されるとともに、国の法令に基づいて自治体が規制政策を執行する手続きが確立した。ところが、国レベルでの法令改正は、政策を画一化する一方で、法令の規制水準に満足しない自治体(東京都、大阪府、千葉市など)が、より厳格な条例を制定するなど、先進自治体による政策内容の再分化を促進させるなど、引き続き複層化する政府間関係に注視する必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、イギリスのタバコ規制政策を受動喫煙防止に止まらず、パッケージ表記、タバコ陳列など他の個別の規制政策を考察し、そこに表出される複層的な政府間関係の実態を明らかにすることができた。また、アルコール最低価格販売規制に関しても、スコットランドからウェールズへと予想外の形で水平的な政策波及が生じていることを確認できた。一方、日本においても、国が健康増進法を改正した時点で、全国レベルで規制政策の内容が画一化する形で、政策刷新の動向が収束するものと予測されていたが、新たな規制内容を持つ条例が制定され、政策が再分化を見せるなど、従来までの先行研究で見られた政策学習・政策波及とは異なるパターンが表出した。このように、日英両国の事例研究から、複層化する政府間関係の実相を明らかにすることが可能になり、次年度の研究とりまとめを有益に行うための成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画の変更あるいは研究遂行上の課題等に関して、特記すべきことはない。当初の研究計画通り、最終年度である本研究では、いままでの事例研究、理論分析の成果のとりまとめを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究においては、海外の調査を早期に準備できたことなど、経費を効率的に執行することができたことから残額が生じた。 次年度は、イギリスのEU離脱時期が正式に決定し、離脱に際しての手続きや制度改革などが具体化し、規制政策に対しても影響が及ぶことが予想されるため、これらの動向を分析するための文献・資料の購入・複写に充当するとともに、スコットランド政治の現状および規制政策を現地において調査するための経費として使用する予定である。
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