研究課題/領域番号 |
16K03457
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 幹根 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (30295373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公共政策 / 政府間関係 / タバコ規制政策 / イギリス / 地方自治体 |
研究実績の概要 |
イギリスのタバコ規制政策は達成すべき目標に対する広範な社会的コンセンサスが形成され安定化するとともに多様な施策が具体的に推進されている。喫煙率を限りなく低下させてタバコのない社会の実現に向けて全体としての喫煙率の低下が基本目標と位置付けられ、そのために、妊婦、若年層、労働者階層の喫煙率の減少、禁煙を支援するためのエビデンスに基づいた新たな手法の導入がすすめられている。また、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各領域で規制政策が同化傾向を見せている。 こうした中、近年関心が高まっている電子タバコに関しては2016年にEU共通の規制政策を導入した。その後イギリスのEU離脱を受けて、The Tobacco Products and Nicotine Inhaling Products (Amendment etc.) (EU Exit) Regulations 2019 and 2020が制定された。一方、イギリスでは近年、電子タバコを紙タバコの禁煙を進めるための医療用品としても積極的に位置づけようとする意見があり、位置づけに対する評価が分かれており、今後注目すべき争点である。 また、現代日本の政府間関係について見れば、近年の新型コロナウイルス感染対策の中で注目されるとともに批判を集めた保健所の役割について、受動喫煙防止政策の執行との共通点を明らかにすることにより研究を発展させる可能性がある。特に、人員や予算など組織体制が十分に整備されない中で、資源制約状況の中に合って実効性を確保するための政策手段を公式的または非公式的なレベルでどのように確保しているのかを明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究におけるタバコ規制施策の比較研究では基本的な枠組みを形成し、両国の共通点と相違点を解明しつつある。こうした中、各論として日本では加熱式タバコの扱いに関して、改正健康増進法では第二種施設において「加熱式タバコ専用喫煙室」が設置されており、受動喫煙防止政策に対する合意形成の難しさが規制内容を複雑化させていることを象徴している。日本でも加熱式タバコは紙タバコに代わる消費財として普及しつつあることから、今後、比較研究を深化させるために、電子タバコ・加熱式タバコに対する広告規制および公衆衛生の知見の影響に焦点を当てた考察が有益であると考えられる。 実証研究では、2020年の改正健康増進法の施行後、受動喫煙防止政策が全国レベルでどのように展開されているのか、同法の執行過程や、すでに受動喫煙防止条例を指定している自治体とそうでない自治体との差異などを調査することが期待されたが、昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの感染が収束しない状況下で実施することが困難であり、見送らざるを得なかった。また、同様に、イギリスにおける現地調査に関しても、新型コロナウイルス感染防止の入国制限等のため行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
特記すべき事項はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究においては、経費を効率的に執行することができたこと、また、渡航先が入国制限措置及び入国後の行動制限を行っており、新型コロナウイルス感染症のリスク回避のために海外調査を見送ったこと等から残額が生じた。次年度は、イギリスにおいて新型コロナウイルス感染症対策の制限が次第に解除されつつあり、本研究が考察するイギリスの政府間関係および公共政策を考察することが可能となりつつある状況にあるため、スコットランドにおいて現地調査を行うために次年度使用額を執行する。
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