研究課題/領域番号 |
16K03458
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮脇 淳 北海道大学, 法学研究科, 教授 (50281770)
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研究分担者 |
山崎 幹根 北海道大学, 法学研究科, 教授 (30295373)
村上 裕一 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (50647039)
若生 幸也 北海道大学, 公共政策学連携研究部, センター研究員 (90620790)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人口問題 / 北海道 / 持続可能性 / ローカル・ガバナンス / 公共政策 / 地方行財政 / 構造改革 / インフラ再編 |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、概ね(1)北海道内外自治体の実態把握、(2)ローカル・ガバナンスの課題抽出、(3)今後の研究に向けた予備的考察、の3本柱から成る。 (1)現状把握のため、道内自治体のほか、千葉県柏市、東京都特別区・羽村市・国立市、神奈川県藤沢市、茨城県つくば市で実地調査を行い、これらに関して、都市型・ベットタウン型自治体、もしくは中核都市群・中心都市群・地方周辺都市群・周辺地域などといった分類に応じて異同を整理した。少子高齢化が地方行財政に与える影響は特に道内自治体において大きく、課題先進地として他地域にとっても教訓を提供し得る反面、首都圏特有の課題の存在も示唆された。 (2)実態調査と理論を踏まえ、①人口減少社会において持続可能な地方行財政を構築するべく、いかなる構造改革・再編をしていくか、②その中で、実効的な地域政策を策定する各自治体の能力をいかに開発・向上していくか、③さらに、そうした構造改革と政策策定の技術的・政治的正当性を確かなものとするべく、いかに地域住民と協働していくかという課題を改めて整理した。①に関しては地方行財政の効率化と民間化、具体的には例えばネットワーク型生活インフラ再編が重要であり、③との関係では公会計情報等の蓄積と伝達が必要になる。②に関しては、地域資源の高付加価値化、利害関係者との広域的なネットワーク形成などがうまく①や③に作用することが期待される。 (3)上記の考察を深める中で今年度は関連する諸政策の評価にも取組み、その成果は結果として今後の研究の予備的考察に繋がった。具体的には、各自治体の子育て政策の競争的展開が地方行財政に与える中期的影響を検証したり、日本スコットランド協会等で成果を発表し国際比較やグローバル化の視点を持って関係者と意見交換をしたり、道内自治体の調査結果を基に国の地方創生策が何をもたらしたかを考察したりした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、人口問題に対して頑強で持続可能な地方行財政を構築する理論的・実践的方策について検討することを目的としている。 今年度は、特にハード・ソフト両面での各種インフラの縮小・撤退・閉鎖の社会的意思決定の事例研究を行う計画であったが、実際には、当初計画していた(1)北海道内外自治体の実態把握に加え、(2)ローカル・ガバナンスの課題抽出、(3)今後の研究に向けた予備的考察にまで取組むことができたことから、計画以上の成果が挙げられたと言える。 しかし他方で、(1)北海道内外自治体の実態把握に関して、各自治体で実態調査を行いそれら個別の政策問題について情報収集と事例研究を進めることはできたものの、それらを本共同研究の大きな枠組み・体系の中に位置付け、理論的な意義や含意を十分に見出すまでには至っていない。その意味で当初の計画通りに進んでいない面もあることから、以上を総合し「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは初年度を終えて残された課題に取組んだ上で、次年度は、当初の計画通り、社会技術・科学技術の融合や空間制御の観点からローカル・ガバナンス論を精査する。 すなわち、初年度の成果を踏まえつつ、①既存政策の検証(特に、10年を経た市町村合併及び指定管理等民間化政策の成果)、②地域における社会技術(中央と地方、官と民との適切な役割分担・連携や合意形成、持続可能な地方行財政制度の設計・運用手法、年金・保険、成年後見等の社会諸制度)と科学技術(持続可能なローカル・ガバナンス作りに資する健康・医療や交通・まちづくり・地域開発、情報通信(ICT)等)の現況調査、③空間制御という観点からのローカル・ガバナンスの制度研究、に取組む。 地域の社会技術・科学技術とその融合と、空間の制御に関する図書や雑誌を渉猟するとともに、状況が許せば北海道内外自治体や海外に赴き、理論と実践の両面から比較研究に取り組む。
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