一般的に農業保護政策は政官業の利益誘導体制の産物とされるが、こうした構造がなかった戦前にも農業保護政策は存在していた。では農業保護政策はなぜ導入されたのか?明治後期以降の農業政策を立案したのは農林省の官僚達だった。彼らは欧米の学説と日本古来の農業思想と融合させて、「小農主義」という独自の農業理念を生み出した。それは家族経営の中小自作農を農業の主な担い手とし、協同組合の組織を通じて農家を支援するというものだった。この理念に基づいて、中小農の経営改善を図る政策が作られ、産業組合を中心とした食料管理体制の確立と農村の組織化が促進された。こうした戦前の展開が戦後の農業政策・制度の基盤となったのである。
|