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2016 年度 実施状況報告書

「反エスタブリッシュメント」の政治と政党政治---イギリス労働党の比較事例研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K03461
研究機関名古屋大学

研究代表者

武田 宏子  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20622814)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードイギリス政治 / 政党政治 / 反エスタブリッシュメントの政治 / 労働党 / ジェレミー・コービン / 左翼政党 / 緊縮財政(austerity)の政治
研究実績の概要

研究の初年である28年度はプロジェクト全体の基礎となる作業として、既存の研究文献のレビューと次年度から行う現地調査の準備をすることを目指した。具体的には以下の作業を行なった。1.既存の文献の批判的検討を通じて、労働党結党以来の歴史を概観し、Corbynの党首選出を労働党の歴史に位置づけた。2.既存の文献の批判的検討を通じて、1990年代から2000年代に至るイギリスの政治過程、特に、ニューレーバー政権の展開、スコットランド独立をめぐる国民投票、2015年総選挙について詳細な理解の構築を行なった。3.「反エスタブリッシュメント」の政治の展開が昂進した政治経済的/政治社会的バックグラウンドとして、2010年総選挙後に連立政権によって行われた「緊縮財政」(auterity)の政治の展開に関して既存の文献の批判的検討を行い、知識を深めた。4.2015年労働党党首選挙に関する資料の収集を行った。5. ヨーロッパの急進左翼政党に関する文献を収集し、また学会での報告を聞くことなどを通じて知識の獲得に努めた。
以上に加えて、6月のEU離脱をめぐる国民投票後、 党首選が再び行われることになったことから、当初の予定を変更して以下の作業を行なった。6. 2016年EU離脱に関する国民投票をめぐる労働党の動向に関する資料を収集した。7. 2016年労働党党首選挙に関する資料の収集を行なった。8. 2016年9月にロンドンにおいてCorbynの党首選キャンペーンに参加し、ボランティアとして参加した人々と意見交換を行なった。9. Momentum, Unite, World Transformedに参加するCorbynの支持者にインタビューをおこなった。10. 上記の調査で知り合った方々を通じて、より詳しい現地調査をロンドンとブライトンの選曲で行う準備を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2度目の党首選挙という予定されていなかった事態から当初の研究を計画し、党首選に関する1次資料をさらに収集することが必要であった。また、2017年3月に急遽、手術を受けることになり、病気治療に2ヶ月ほどの期間が必要であった。このため、2016度予算で計上していたPolitical Science Associationの年次大会に参加することができず、加えて、28年度中に予定していた作業の中には、急進左派政党に関する基本的文献の批判的検討など、十分に終えることができなかったものも出てしまった。他方で、9月の現地調査を通じて党首選キャンペーンに実際に参加した方々やCorbynのサポーターからから貴重な知見を得ることができ、加えてロンドンやブライトンの選挙区にに具体的なコンタクトができたので、継続的なインタビュー調査をすることが可能となった。労働党をめぐる状況が流動的であることから、継続的なインタビュー調査は貴重な資料となると考えている。
以上をまとめると、予期していなかった事態から研究計画を変更することが必要であったが、臨機応変に対応することができ、それにより今後の研究の進展にとって重要な研究成果を得ることができたことから、「おおむね順調に」という区分を選択した。

今後の研究の推進方策

周知の通り、メイ首相によって2020年に予定されていた総選挙が前倒しされ、本年6月に行われることになり、選挙キャンペーンが既に始まっている。したがって、本年度の重要な作業としては、第一に、総選挙の過程におけるCorbynのリーダーシップについて分析することになる。また、昨年の党首選の現地調査から、労働党内の政治過程を分析する際に、ジェンダーに関する問題の重要性が浮かび上がってきたので、今年度はジェンダーと政党政治という視点をより主流化して分析作業を行っていくつもりである。
選挙の結果によっては党首交代という事態となることが十分に予想されるが、その場合も本研究は、労働党内のCorbyn支持の党員や組織に焦点をあて、労働党内で始まった改革のプロセスや新規党員の動向の労働党の政治活動への影響について引き続き考察していく。

次年度使用額が生じた理由

2017年3月に外科手術を受ける必要が生じたことから、海外渡航ができず、2016年予算の経費で予定していたPolitical Studies Assocaition年次大会に参加することができなかった。

次年度使用額の使用計画

2017年8-9月に予定している現地調査の期間を延長し、さらに、来年度のPolitical Studies Assocaition年次大会の前後に追加の現地調査を行うこととする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 女性リーダーの時代に向けた課題ー日本とアメリカの現状から見えてくる問題2017

    • 著者名/発表者名
      武田宏子
    • 雑誌名

      月刊自治研

      巻: 688 ページ: 24-31

  • [学会発表] 政治課題としての日常生活2016

    • 著者名/発表者名
      武田宏子
    • 学会等名
      日本政治学会
    • 発表場所
      立命館大学いばらきキャンパス
    • 年月日
      2016-10-01 – 2016-10-01
  • [学会発表] Rhetoric versus Policy: a Case Study of Japan's Abe Administration's Womenomics2016

    • 著者名/発表者名
      Takeda, Hiroko
    • 学会等名
      International Political Science Association
    • 発表場所
      Poznan, Poland
    • 年月日
      2016-07-26 – 2016-07-26
    • 国際学会
  • [学会発表] Between Reproduction and Production: `Womenomics' and the Japanese government's Approach to Women and Gender Policies2016

    • 著者名/発表者名
      Takeda, Hiroko
    • 学会等名
      International Sociological Association (ISA) Forum of Sociology
    • 発表場所
      University of Vienna, Austria
    • 年月日
      2016-07-13 – 2016-07-13
    • 国際学会
  • [図書] ガバナンスを問い直す I 越境する理論のゆくえ2016

    • 著者名/発表者名
      東京大学社会科学研究所、大沢真理、佐藤岩夫,武田宏子他
    • 総ページ数
      253
    • 出版者
      東京大学出版会
  • [図書] 思想史としての現代日本2016

    • 著者名/発表者名
      五十嵐暁朗、武田宏子他
    • 総ページ数
      247
    • 出版者
      岩波書店

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公開日: 2018-01-16  

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