研究課題/領域番号 |
16K03461
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武田 宏子 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (20622814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イギリス労働党 / 反エスタブリッシュメントの政治 / 政党政治 / 左派政党 / 政党と党員 / イギリス政治 / Brexit / 女性議員/党員 |
研究実績の概要 |
研究計画3年目にあたる本年は、これまで行ってきた研究をまとめて研究成果として日本語および英語で公表し、フィードバックを得ることに多くの時間を割いた。具体的には、日本比較政治学会、国際政治学会(IPSA)、アメリカ政治学会(APSA)、世界社会科学フォーラム(World Social Science Forum)のパネルに研究成果を基にしたペーパーを提出し、研究発表を行うことによって、日本内外の研究者たちからフィードバックを得る機会を持つことができた。また、ドイツのGerman Institute of Global and Area Studis (GIGA)や名古屋大学で行われた研究会およびワークショップでも研究発表を行って、有意義なコメントを受けることができた。 研究発表を行い、コメントを受けるという機会は、ペーパーの改稿のみではなく、これまで行ってきた文献の検討やイギリス現地調査について再検討し、追加調査のやり方を具体化し、明確化することにも役立った。特に、これまで行った党員のインタビューがロンドンの選挙区に属するコービン支持層が多かったことから、視点の多角化をはかり、より深い分析を行うためにインタビュー対象者を拡大する必要が痛感された。そこで、これまで継続的にインタビュー調査をおこなってきたHackney North選挙区の近隣のHornsey and Wood Green選挙区でコービンに批判的な労働党員たちに追加のインタビューを2019年3月に行った。また、労働党の動向に関する分析を、2018年11月以降に明示化されたイギリス政治の混迷の文脈に位置づけるために、追加の文献や労働党資料の検討も行った。 最後に、研究成果を総合するために日本語の単著の出版計画を立て、出版社との交渉を行い、出版の同意を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では3年間で現地調査を行って入手したデータを基に、日本語と英語の論文および単著を研究成果としてまとめるということであった。論文は2本が出版され、もう一本(英語論文)は現在、査読中である。単著は現在も執筆作業を続けている。したがって、単著に関しては予定よりも若干の遅れが生じているが、この主な原因はコービンのリーダーシップにとっても重要なBrexitの政治過程が予測とは異なる形で進行し、労働党の動向についての分析を再検討することが必要であると考えられたからである。Brexitの政治過程に関して一定程度の着地点が見える段階まで到達するか、あるいは最低でも5月のヨーロッパ選挙の動向を分析に加えた上で、単著の原稿を完成させる予定である。 したがって、研究計画を立てた際には予想していなかった政治過程の動向から執筆計画には多少の遅れが発生しているものの、他方で、当初予定していたよりも多くの研究発表を行い、またイギリス政治の動向を一般聴衆に解説することを通じて、本研究の成果を社会に還元し、社会的貢献を行う機会を持つこともできた。こうした付加的な貢献を加味して、総合評価の区分は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
年度末に本研究計画の期間延長を申請した。その理由は、スケジュールの問題で、本研究計画の研究成果をイギリス政治学会で発表するためには期間延長が不可欠であったことによる。イギリス政治学会で議論を提示することにより、本研究成果の分析の妥当性に対して、より明確な評価が行えると期待している。 その上で、単著原稿の完成し、本年度中に本研究計画の主要な研究成果として刊行することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画にとって重要なイギリス政治学会での研究発表が学会側のスケジュールの問題から研究年度終了前に行うことができなかったため、期間延長を申請し、承認された。
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