最終年度の研究成果は以下の3つである。第一に、国内資料に基づき、自衛隊内部の災害派遣に対する認識を解明しつつあることである。本年度は各種資料館や古書店を通じて、『第3管区隊史』や『雲仙・普賢岳災害派遣部隊 行動命令書』、陸上自衛隊衛生学校『災害派遣行動史』などのほか、自衛隊内部機関誌に掲載された幹部の記事を入手した。それらを分析し、施設科部隊を中心とする自衛隊の災害派遣に対する認識の形成過程が明らかになっている。第二に、海外資料に基づき、災害派遣をめぐる在日米軍と自衛隊の間の関係を解明しつつあることである。昨今、すでに1950年代から日米間で有事を想定した協力体制が計画されつつあったことが明らかにされている。そうした先行研究も参照し、国内および海外(アメリカ国立公文書館)にて調査を行い、在日米軍の国内災害救援活動における資料収集を行った。決定的な資料発見はなかったが、さらなる調査の筋道を見出すことができた。第三に、研究成果の発表である。従来の研究で得られた知見を基に、書評論文を2本書き(「「書評 沢井実『海軍技術者の戦後史―復興・高度成長・防衛―』」『ヒストリア』、「自衛隊による国際平和協力の到達点―平成史の「現場感覚」―」『国際政治』。いずれも2020年度刊行予定)、研究作業の途上に発見した資料の刊行を行った(『朝海浩一郎日記』〔千倉書房〕)。 次に研究期間全体を通じて実施した研究の成果である。本研究の目的は、自衛隊の災害派遣活動を歴史的観点から再検討することにあった。したがって、自衛隊内部の各種資料や米軍内部資料を入手できたことは大きな成果であった。そして、そうした豊富な資料を基に、災害派遣をめぐる中央および地方レベルにおける「政軍関係」や、在日米軍と自衛隊の関係の一端を明らかにすることもできた。今後、論文や著書を通じてその成果を発表していく予定である。
|