本研究の最終年度である2019年度には,これまでに行ってきた研究を国際学会等海外で発表することと,住宅と政治を考えるにあたって新たにマンション管理組合という対象への考察を進めることが行われた。 前者については,大都市の国際比較を試みた研究について公共政策国際会議(International Conference for Public Policy)にて報告を行ったものと,地方議会における投票疲れの問題についてヨーロッパ政治研究コンソーシアム(European Consortium for Political Research)において報告を行った。いずれの報告も,貴重なコメントや意見交換を行うことができて,英文雑誌への投稿準備を進めている。 後者については,国土交通省から「マンション総合調査」についてのデータ提供を受けてマンション管理組合によるマンションのガバナンスについて定量的に検討した。その分析は,『都市とガバナンス』に掲載されており,政治学の観点からマンション管理という問題に取り組んだ数少ない研究成果のひとつとなっている。また,神戸市におけるマンション管理の検討会に参加して知見を提供した他,『建築雑誌』や『Wedge』などに住宅やマンション管理についての知見の提供を行った。 補助期間全体を通じて,一冊の単著(『新築がお好きですか?』)のほかに7編程度住宅や住民投票についての論文を発表し,いくつかの論文は投稿準備中となっている。単著を中心とした住宅についての研究は,これまで日本の政治学において関心の薄かった住宅と政治という分野を切り開くものとなったと評価できる。また,発表した論文のうち3本とそれ以前の研究と併せて,2021年中にさらなる単著を発表することを予定している。
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