研究実績の概要 |
リスク・ガバナンスにおける不確実性の政治学の射程に入るイシューは多岐にわたるため、二年目も主として文献調査を通じて問題の整理を行いながら理論的考察を深め、その成果の一部を論文として公刊した(下記参照)。Ⅰ番目の論文は、グローバルな立憲主義がリスク対象者(逸脱者)との相互作用で形成されてきている過程を追いながら、そこに内在する矛盾(二重基準性など)を考察することを通じて、懲罰的な「リベラルな」リスク・ガバナンスの限界性について論じたものである。2番目の論文は、最近、議論されることが多くなっている「地政学的リスク」について、そのことをめぐる言説の政治の背景および、その問題性について批判的に検討したものである。3番目の論文は、前年度から引き続いて行っている、リスク対象者をめぐる「動物化の政治」についての考察を深め、そ<人間/動物>、さらにはポスト・ヒューマニズムの政治について理論的整理を行ったものである。それらと平行して、金融リスクをめぐるデモクラシーの問題についてアイスランドの諸事例を対象に大学院生らと共同で調査研究を行っている。
1,"Global Constitutional Order and the Deviant Other: Reflections on the Dualistic Nature of the ICC Process," International Relations of the Asia Pacific, vol.18(1), 2018, pp.45-70.(Doi: 10.093/irap/lex023). 2,「地政学的言説のバックラッシュ 「閉じた世界」における不安と欲望の表出」『現代思想』2017年8月号、60-70頁. 3,「批判的安全保障研究における動物論的転回の意味 ポスト・ヒューマニティの倫理/政治学」『国際協力論集』vol.25(1), 2017年, 65-79頁
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