研究課題
最終年度においては、研究会を行い、「臨床行政学」の具体的な内実を体系的に整理することができた。臨床行政学は、既存の行政学が(イ)一般化志向、理論重視という特徴を持つ反面、行政現場の個別性・複雑性を軽視している点、(ロ)Whyという問いと実証性を重視する反面、Howという問いと規範性を軽視している点を問題視する。臨床行政学は、現実・実態の豊潤さに敬意を払い、現場実践への貢献を意識する。そして、次のような特徴を有する。第1に、現場実態の複雑性を重視する。まず、「意図せざる結果」に着目する。それが現場職員が対処しなければならない不確実性・複雑性の端的な表れの一つだからである。そして、「媒介変数(条件)」にも着目する。媒介変数を統制することは、現実においては多くの場合不可能なのであり、むしろ独立変数と従属変数をつなぐ決定的に重要な要因としてこれを正面から扱う方が、現場の行政職員への示唆につながると思われるからである。また、このように具体的条件(媒介変数)を問題にする思考により、机上の抽象的理論の前提がいかに成り立たないのかも露になるはずである。さらに、複数価値間の競合に苦しむ行政職員の実態にも着目する。第2に、社会構成主義の方法などを通じて、現場における人々の発想・行動の決定前提として認知的に作用している「現実」を明らかにする。自分たちの発想・行動を規定している「現実」を自覚することは、改善アクションの大前提となる。第3に、以上を踏まえて、①Howの形で現場への実践提供を行ったり、②“ある主体が、いかなる条件下で、いかなる「現実」を前提にいかなる考えのもとにいかなる行動をとったのか。その結果、何が生じたのか”といった他事例情報を提供することで、類似の状況下にある主体に反省的対話を促したりする。以上のような臨床行政学の内実を、事例研究とともに世に問うことが残された課題である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (8件)
月刊地方自治職員研修
巻: 53(3) ページ: 36~38
ガバナンス
巻: 228 ページ: 23~25
自治体学
巻: 33(2) ページ: 5~7
地方自治ふくおか
巻: 70 ページ: 65~72
巻: 69 ページ: 95~111
地域開発
巻: 630 ページ: 14~17
自治総研
巻: 45(5) ページ: 89~130
巻: 52(6) ページ: 24~26
巻: 45(6) ページ: 59~91
巻: 222 ページ: 32~34