研究課題/領域番号 |
16K03474
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 俊道 九州大学, 法学研究院, 教授 (80305408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 帝国 / ジェイムズ1世 / ブリテン / 君主論 / 人文主義 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、当初の予定通りに、初期近代ブリテンにおける帝国論と君主論の知的基盤となった人文主義の展開についての理解を深めるとともに、昨年度から着手していたジェイムズ6世・1世と顧問官に関する研究を進めた。 前者については、平成29年5月に一橋大学で開催された日本哲学会において、「「古代の思慮」から「近代の哲学」へ?―マキァヴェッリ、ベイコン、ホッブズの政治学をめぐって」と題する報告を行った。また、後者については、9月に法政大学で開催された日本政治学会において報告を行い、その研究成果を平成30年3月発行の『政治研究』において発表した(「「大ぶりたんや国」の統治術―ジェイムズ6世・1世と顧問官たち」)。 以上の研究においては、人文主義の政治学が、古代ローマをはじめとする歴史に育まれた「古代の思慮」に立脚していたことが確認されるとともに、その伝統がマキァヴァッリだけでなく、ベイコンやホッブズにも受け継がれていたことが明らかにされた。 また、このような人文主義的な教養は同時代の帝国論や君主論の基礎となったが、このことを端的に示す人物として注目されるのがジェイムズ6世・1世である。当該年度においてはとくに、『自由な君主政の真の法』や『バシリコン・ドロン』、そして彼の議会演説などを再読するとともに、ジェイムズによるイングランド王位継承の過程に着目した。そのうえで、ジェイムズが人文主義的な君主論を展開しただけでなく、ロバート・セシルをはじめとする顧問官との共同作業によって、複合君主国としてのブリテンの統治に取り組んでいたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の当初の予定を前倒しで開始していたことに加え、日本哲学会と日本政治学会という全国的な学会において研究報告を行うだけでなく、当該年度までの成果を研究論文にまとめ、査読を経たうえで『政治研究』に発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の作業は順調に進んでおり、平成30年度はそれらを単著にまとめる作業が中心となる。書物の概要についてはすでに出版社と打ち合わせが進んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋図書の購入に際して、出版が延期され、当該年度中に購入できない図書が生じたため。
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