研究課題/領域番号 |
16K03477
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂樹 熊本大学, 法学部, 教授 (90187724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 男女共同参画 / 行政組織 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究は、イタリアにおけるジェンダー政策の行政的実施体制の形成と展開に焦点をあて、公的組織のジェンダー構成(組織ジェンダー)の変化がその組織の活動内容(事業ジェンダー)の変化にいかなる影響を与えるかについて検証することを目的としている。 平成28年度の研究計画としては、研究の基礎資料および情報の収集を主な作業と位置づけ、イタリアの国内本部機構および行政組織内の男女機会均等推進委員会に関する法制度的枠組みの把握、ならびに日伊比較のために、我が国の政府機関についての調査・情報収集を行った。直接的な研究成果の公表は行っていない。 男女機会均等政策の基本枠組に関しては、それまでの均等政策関連法令をまとめた2006年4月11日委任立法198号「男女機会均等法典」に関連する諸法令、研究文献などの整備に努め、イタリアのジェンダー平等政策・国内本部機構等の法制度的枠組み分析のための準備作業を行った。 行政内での男女平等の取り組みに関しては、2007年5月23日に人権・機会均等担当大臣と行政改革・技術革新担当大臣の合意のもとに発せられた指針「行政内における男女機会均等の実現のための措置」を分析対象の具体的素材として関連資料の収集に努めるとともに、同指針の翻訳・注解作業を行った。 イタリア男女機会均等政策に直接関連する研究文献・資料、さらに男女機会均等化の取組が政策課題として認識され、政策アジェンダとして取り上げられるに至った歴史的、社会的背景および運動のアクターや思想などに関する基本的文献、さらに比較分析を行うため、日本を含めた他の諸国の関連文献と基礎資料の収集、特に分析枠組みを提供する内外の理論的研究文献やジェンダー関連の基本文献を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究計画で設定した基礎的資料・情報の収集という点では最低限の作業を行ったが、その整理分析作業および実態調査に向けた準備作業という点では進捗状況は芳しくない。熊本地震の影響が以下の2点において顕在化し、十分な研究環境と研究時間の確保が覚束なかった。 第1に、地震により研究室および自宅の書架等が倒壊したが、その復旧に予想より時間を要し、その間、所在確認の作業など蓄積してきた関連資料の利用に不便を強いられた。 第2に、震災および復旧・復興過程において、地域や社会からの要請への対応に時間と労力を割かざるを得なかった。ひとつには、二つの自治体の復興計画策定にかかわり、その作業が年末まで続いたこと。他方、震災関連での研究者としての発言を求められ、その対応に追われたこと。具体的には、「学生たちの『震災とマスメディア』―被災地での評価と批判」(『新聞研究』2016年7月号)、書評「熊本地震 連鎖の衝撃」(熊本日日新聞2016年11月20日)の執筆、さらにはマスコミ倫理懇談会全国大会分科会C「メディアは被災者にどう向き合うか―熊本地震の現場から」(2016年9月29日)報告者、シンポジウム「熊本地震が提起する法的・政策的課題」(熊本大学法学部・武夫原会共催 2017年1月21日)パネリストの準備(および報告文作成)等にエネルギーを割かざるをえず、本研究に予定した時間と労力を振り向けられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に十分に行えなかった法制度的基本枠組の分析整理を行い、政策・制度運用の実態分析に向けた準備を行う。文献・資料収集に関しては適宜、必要最小限の補充を行う。 まず男女機会均等政策の基本枠組および行政内での取り組みに関する整理・分析作業を優先的に行う。2007年5月23日指針「行政内における男女機会均等の実現のための措置」の資料公表をはじめ、EUのイタリアに関する報告書などを手掛かりにジェンダー政策の法的政策的枠組みについての分析を行う。 そのうえで、統計資料による実態分析として、イタリア統計局(ISTAT)の「イタリア統計年鑑」各年版など同局および関連省庁の報告書等(機会均等庁の調査報告書、統計局編の90年代末段階での機会均等委員会に関する調査報告書、行政改革庁による上級官僚に関する報告書など)をもとに均等化に関する諸特徴を経年的変化も含めて明らかにする。 以上の法制度的枠組、統計的実態分析をふまえて、中央省庁の現地調査(ローマ)を行う。取材先は、機会均等庁、行政改革・技術革新庁を中心に他省庁内における機会均等化の取組状況についても調査する。主な調査項目としては、組織や政策の客観的データのほか、男女均等化政策の現状と課題、行政内均等化の現状と課題、EUの均等化政策と国内政策との連携のメカニズム、行政改革全体のなかでの均等化政策の位置づけ、均等化のもたらす政策的含意・可能性など。 ただし、現地調査に関しては、作業の進捗状況および必要経費(文献補充経費との兼ね合い)などを勘案して30年度に一括して行うこともあり得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に図書購入に当てた物品費が正確に見込めなかったため、文献複写費を想定した「その他」の予算執行を控えた。その結果として未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の図書・資料購入の不足を補うため、29年度の物品費として使用する。
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