本研究は、イタリアにおけるジェンダー政策の行政的実施体制の形成と展開に焦点をあて、公的組織のジェンダー構成の変化がその組織の活動内容の変化にいかなる影響を与えるかについて検証することを目的としている。 平成28年度における基礎資料収集作業につづいて平成29年度では、首相府公共機能局2007年5月23日指令「公行政における男女の平等ならびに機会均等の実現に向けた措置」について解題とともに資料公表を行った。平成30年度には関連政策分野の分析の一環として社会福祉政策の形成と展開についての整理を行った。 令和元年度は、前年の社会福祉政策に関する作業を「イタリア福祉国家論」の形で正式に公表するとともに、公的組織のジェンダー構成とその組織の活動内容という2要素のうち、前者の分析把握に焦点を絞り、イタリア行政のなかにおけるジェンダー平等に向けた取り組みを関連基本データの整理を行いつつ分析する作業を進めた。この作業は研究全体にとって避けて通れない必須のプロセスであり、この点では、全体の研究計画を見直し、本科研費研究期間終了後をも視野に長期的見通しのなかに位置付けて取り組んだ。具体的には、2007年5月23日指令に基づいて作成された首相府の年次報告書のうち利用可能な2008年版、2009年版、2010年版、2011年版、2012年版、2014年版をEUのイタリアに関するジェンダー平等政策に関する報告書などを踏まえつつ各省庁の取組みに焦点を当てて整理・分析する作業を行った。 なお、社会への還元・情報発信としては、研究期間中、熊本県をはじめ佐賀県、宮崎県などの国、地方公共団体ならびに各種団体において計27件の男女共同参画についての講演、研修を行った。
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