研究課題/領域番号 |
16K03478
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松井 望 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70404952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地方政府 / 協定 / 基本方針 / 行政計画 / 自律性 / 応答性 |
研究実績の概要 |
本研究では、行政手続の自律性と応答性の考察を進めている。具体的には、地方政府における行政契約・行政協定制度を主たる分析対象におきながら、行政手続に期待される価値(公平性・正確性)を確保しつつ住民・利害関係者への対応実態の把握に取り組んだ。 本年度は、研究実施計画に基づき次の三つの研究を進めた。一つめは、主に政令指定都市を対象に、行政手続の制度上の特性を明らかにすることを目的に、政令指定都市が公表している各種計画・報道資料等の行政手続の関連資料の収集整理を進めた。本年度は、行政契約・行政協定とどうにソフトな行政手法となる計画・基本方針に力点を置きながら資料収集と整理に努めた。 二つめは、都道府県・政令指定都市・一般市を対象に行政手続の制度運用と具体化の過程に関する聞き取り調査を実施した。具体的には、政令指定都市に対して各地域内の関係者(住民、産業、教育研究機関、金融機関、言論組織等)との連携が記載された地方版総合戦略を対象に、計画策定過程と管理運営に関するインタビュー調査を実施し研究成果にまとめ公刊した。 三つめは、上記2つの研究成果をまとめるうえで必要となる地方政府の行政運営、行政手法、政策実施等に関する文献収集、資料収取を行い、各種研究成果をまとめるうえで活用をした。具体的には、震災復興時での住民対応手続きを分析し、公刊する際に活用を行った。 地方版総合戦略に関する研究からは、従前の計画とその運営手続きとの対比を行い、既存制度からの継続とともに、主として国からの計画策定への要請に対する対応(応答性)のパタンを抽出し、従来の研究では明示化されてはこなった地方政府における計画手続における政府間での応答と自律性を明らかにした。また、震災時の対応では住民から要請等を踏まえつつも、組織内の各種資源制約による「ふるい分け」の対応状況を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、初年度は政令指定都市、次年度は政令定都市と特別区、最終年度は中核市を中心とした50万以上の都市を対象にインタビュー調査を実施することを計画した。上記の通り、初年度目には調査の受け入れ状況により調査が及ばなかった都市に対しても調査を進めることができ、研究成果を公表することができた。 他方で、研究過程のなかで、本研究の問題関心をより明確にするためには行政協定・行政契約以外のソフトな行政手法にも観察対象を拡大することがより適切であるとも判断し、研究対象の再設計を行った。また、ハードな行政手法となる条例も本研究の問題関心の理解を深めるためには必要であるとの考えに至り、条例分野を限定したうえで研究対象に広げた。これにより調査対象の再整理と受け入れ可能な範囲での調査を進めたこともあり、上記の研究実施計画で想定した調査対象への調査が年度内では実現に及ばないことがあった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究実施計画に沿いながら、政令指定都市、特別区とともに中核市をはじめとする多様な規模での地方政府を対象としたインタビュー調査を実施していく。これらにくわえて、制度・運用の実態把握の結果を踏まえつつ、地方政府における行政手続の自律性と応答性に関する理論的な検討を行う。そして、初年度目、2年度目に引きつづき、最終年度も研究成果の公刊を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) インタビュー調査の実施に際して受け入れ自治体との間での調整が及ばす、次年度使用額が生じた。また、調査対象の再設計により、当該年度内での調査依頼が及ばない事案があった。 (使用計画) 最終年度において、適宜、受け入れ自治体の対象の選定を再検討したうえで、着実な執行を実施する。
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