本研究は、議会選挙における1票の格差の是正をめぐって議会・司法・有権者の間で展開される立法ゲームを対象に、司法政治論の観点から日韓のケース(事例/判例)を比較し、それぞれの政治過程を分析するものである。 最終年度である今年度は、研究成果をとりまとめ、専門書・入門書・一般書など様々な形で学界や一般社会に向けて順次還元することに努めた。 成果は次のとおりである。第1に、憲法学と政治学の研究者が半数ずつ参加した「統治のデザイン」に関する専門書(2020年7月刊行)において、「司法」の政治学的分析を担当し、「司法政治論(judicial politics)」の重要性を示した。この「司法を政治学する」という観点から、1票の格差是正に関する衆議院・参議院・韓国国会のケースを分析する専門書を単独で刊行するべく、出版打ち合わせを行った。 第2に、韓国に関する入門書を共著で刊行し、日韓関係や南北朝鮮関係に関する章に加えて、「韓国という「国のかたち」」に関する章を担当した。そこでは、「司法というプレーヤー」という節を設けて、司法積極主義に立つ憲法裁判所や、大法院(韓国最高裁)も含めて「政治化」する司法人事について、広く一般向けに紹介した。こうした韓国司法のありようは日本の韓国理解における躓きの石になっているが、1票の格差是正において「違憲・無効」にするのではなく、最高裁の「違憲状態」と韓国憲法裁の「憲法不合致」という判決・決定には、議会との間で「対話」を行おうとする共通の姿勢が見られる。 第3に、1章分を司法に充てた韓国政治に関する一般書の改訂に取り組んだ。近いうちに刊行できるように最善を尽くす。
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