本研究課題は,さまざまな問題に直面した政府が,政権の維持及び各行政機関の組織存続を企図する中で行う,更迭(人事面)や組織再編(組織面)などの帰責処理に着目してそのダイナミズムを探究し,ひいては統治の有り様の変容を考察しようとするものである。 期間を再延長した2021年度は,引き続き,成果の取りまとめに尽力するほか,調整を進めていた国際的な研究発信を柱として最終年度の研究を完遂する予定としていた。しかしながら,コロナ禍の中で,国際的な研究発信の機会については再考を余儀なくされた。他方で,コロナ対応は,まさに本研究課題と密接に関連することから,前年度に引き続き今年度も研究課題として取り組むこととした。 具体的には,第1に,前年度に引き続き,事態の推移を観察しつつ,コロナ対応に関する組織及び人事についてデータ分析を継続した。第2に,前年度に行った2009年の新型インフルエンザ対応以来の一連のパンデミック対応の構想について分析を踏まえ,その成果を論文としてまとめ,法学専門誌である『法律時報』にて発表した。その他,コロナと行政対応に関する書評を執筆し,学会誌で発表する予定となっている(2022年5月頃に刊行予定)。また,当研究課題で行った研究成果も取り入れる形で,大学院レベルの公共政策に関するテキストブックの執筆を行い,社会還元を目指し,2022年3月に刊行することができた。関連して,この研究課題に着想を得て,日本行政学会2021年度研究会において,共通論題を企画した(「行政の冗長性を再考する」)。
|