都市計画法制は、都市全体の一般利益を優先するため、個別利益に対して公共団体に公権力を付与しているが、土地所有権の保障がされているため、一般利益が個別利益に影響を受ける。こうした一般利益と個別利益のメカニズムは、制度の構造を規定するガバナンスに深くかかわると考えられる。 そこで、本研究では、ガバナンスの違いによる法制の一般利益への個別利益が齎す影響と、そのメカニズムを解明するため、日仏の即地的詳細計画を素材に、この制度の立法過程と執行過程の一般利益と個別利益の関係を明らかにすることを目的とした。本研究では、まず、日仏の制度創設及び制度運用の実態を明らかにするため、次のような調査・検討をおこなった。立法過程に関しては、関係省庁への聞き取り調査を実施し、また、法案作成及び審議経過にかかわる資料などの分析を行い、個別の権利利益が制度創設にどのような影響を与えているかを明らかにした。執行過程に関しては、制度の運用にかかわるアンケート調査や、地方公共団体、地域組織などへの聞き取り調査などを実施し、一般利益と個別利益との関係がどのように調整されているかを明確にした。最終年度では、こうした調査を確認、整理した上で、研究枠組みを再構築し、個別利益と一般利益との関係を分析した上で、とりわけ、一般利益を優先するフランス、個別利益を優先する日本という価値志向の違いによって都市計画決定の正当化プロセス及び正当化理由が異なることを明らかにした。
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