研究課題/領域番号 |
16K03487
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
出雲 明子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (10510076)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 政治的中立性 / 地方議会の担い手 / 人口減少社会 |
研究実績の概要 |
地方議会選挙では、都道府県、町村議会を中心に無投票選挙が増加しており、地方議会の担い手不足が懸念されている。人口減少社会を迎えて、地域社会の問題解決を行なっていくためには、多様で専門的な議員の役割は不可欠である。そうした問題意識に基づいて、会社員の立候補促進方法、公務員が地方議会の担い手となることが可能か、日本の戦前の制度と運用との比較、国際比較を内容とする研究計画を進めている。本年は、主に、日本の実態を把握することを目的として、具体的に以下の3点を明らかにした。 第一に、無投票当選の量的変遷、それが生じている地域の政治的、社会的特性の分析をふまえて、無投票当選が生じる原因と解決策を検討した。無投票当選を減らすための解決策はいくつかあるが、担い手の拡大が有効な策であることを指摘した。 第二に、会社員が在職のまま地方議会議員に立候補する例はあり、担い手の拡大がみられる。それに対して、公務員の場合には、立候補するとただちに退職することとなり、会社員と比較した時に強い制限がかかっている。公務員には政治的中立性が求められるためであるが、人口減少する地域社会において住民が総力で地域を活性化をしようとするとき、町村まであまねく強い規制が必要かには疑問がある。公務員が休職して立候補することを可能とする仕組みの導入可能性を制度、運用の両面から検討した。 第三に、政治的中立性のもとで公務員の立候補禁止がなされた歴史的経緯を明らかにし、兼職がみられた戦前の実態を調査した。しかし、戦後民主化の過程で徐々に規制されたことを指摘し、現在もなお、労働問題、二元代表制との関係での検討が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画としていた無投票当選の実態把握、なぜ公務員に政治的中立性が課されたのかという2つの点について研究を進め、2本の論文にまとめることができた。次年度の研究に向けたデータ収集、整理も進めることができた。以上のことから、順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、公務員の立候補制限に関する国際比較に進む予定である。国際比較をする上では各国の実態把握をする必要があり、年度前半には文献やウェブで実態把握を進める。研究計画に沿って国の選定が行えるとよいが、実態把握の過程で変更することもあり得、できるだけ早く実態把握を進めることが課題となる。あわせて現地調査を行うため、インタビュー先の選定、インタビュー内容の決定を迅速に行い、さらに研究を発展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月にアトランタで行われるアメリカ行政学会で研究報告を計画していたが、報告申請の時期に長期で体調が不良で、渡航できるか定かではなく、申請をすることができなかった。3月になり、報告はできないものの、学会への参加を検討したが、翌年度改めて報告を申請する計画とするよう見直した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に改めてアメリカ行政学会またはアメリカ政治学会で報告申請をし、研究報告を行いたい。そのための渡航費として使用したい。
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