研究課題/領域番号 |
16K03489
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石川 敬史 東京理科大学, 基礎工学部教養(長万部), 准教授 (40374178)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 立憲主義 / アメリカ革命 / 政教分離 / 連邦制度 / 大統領制度 / 自然権 / 環大西洋史 / 社会契約 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ革命期の政治思想史を検討し、アメリカ立憲主義のあり方を再検討するとともに、広く立憲主義全般に新たな視座を提供することを目指すものである。特に本研究の特徴は、アメリカ革命における王政的論理に焦点を当て、アメリカ革命そのものを再検討しつつ、アメリカ立憲主義を再定義しようとしていることにある。 平成28年度の目標は、分析枠組みの構築であった。具体的には、アメリカ革命期の政治史・政治思想史・政治哲学に関する研究文献を精読し、最新の研究動向を分析整理するとともに、近年省みられることの少なくなった過去の研究学説の再検討を行うことである。主に二次文献の検討に研究時間の主軸を置く計画であったので、その計画にそって、二次文献の精読に努めた。 本研究の問題関心によって、研究成果は既存の研究史を再検討したものが中心となった。具体的には、2016年6月18日に日本ピューリタニズム学会において、「北アメリカ植民地における人権概念の契機」と題する報告を行い、近代的啓蒙思想とピューリタニズムという一見、相反するように思われる思想潮流が、植民地時代のアメリカにおいて、普遍的な人権概念の創設に本質的な影響力を持っていたことを指摘した。同学会における報告内容は、2017年度刊行の『ピューリタニズム研究』に掲載される。また、立憲主義思想の理論的研究の成果としては、2016年11月に山川出版が刊行した『名著で読む世界史120』において、ジョン・ロックの『統治二論』および、トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』についての解説を執筆した。自然権理論の古典となっている両書を再検討し、現在の読者層に提示したことは、一般的に意義深いと考えられるし、本研究課題である、アメリカ立憲主義再定義にも資するものであったと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二次文献の分析作業が、研究計画書作成段階では想定していなかった学内業務多忙のため、やや遅れている。また国内出張回数が予想を下回ったため、2016年度の国内旅費の執行が滞った。ただし次の理由から、研究計画期間の研究遂行計画そのものには、大きな影響はないと考えている。 まず第一に、当初の申請書においても、分析枠組みの構築のための二次文献分析作業は、次年度も継続して行うことは折込んでいたので、初年度の蓄積を効果的に展開できることが期待できる。 第二に、初年度の研究によって、今後購入すべき文献が明確になったので、より効率的に文献の収集にあたることができると同時に、学会発表等の成果も期待できるようになった。 以上の観点から、進捗状況はやや遅れているが、研究期間内に妥当な研究活動をできるだろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方法としては、初年度に引き続き、「アメリカ革命の政治思想史研究」、「アメリカ革命期の指導的知識人による論文、書簡、日記の整理と考察」、「アメリカ革命の政治史研究」を平行して行う。 本研究課題二年目の本年度は、前年度までの成果をもとに引き続き同様の研究活動を行うが、特に二つ目の軸である「アメリカ革命期の指導的知識人による論文、書簡、日記の整理と考察」を本格的に始めたいと考えている。 また、本年度より、本研究活動の成果を公表するための学会報告の準備および、書籍刊行のための原稿執筆に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究計画よりも研究活動の進捗が遅れたため、文献購入作業が進まず、284,873円分が消化できなかったため。研究活動の進捗が遅れた理由は、分析枠組み確定のための二次文献の精読・整理の作業が予想以上に難航し、本研究の遂行に必要な文献史料を特定するのに大きな時間を費やしたことにある。この作業は、日々の学内業務の合間を見て行ってはいたが、所属大学の夏季休暇等、まとまった時間がある日に集中的に行うのが理想的であり、当初はそれを計画の中に入れていた。しかし、夏期休業中の学内業務は研究計画書作成段階の予測を上回るものであり、まとまった時間を確保することが困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究初年度の進捗状況こそやや遅れたものの、この期間の研究活動を通して、購入すべき文献が概ね明確になった。リストアップした研究文献を、計画的に購入し、その精読・整理につとめる。また、本研究を進めるにあたり出席すべき研究会や学会も明確になったので、出張等旅費等の予測も立てやすくなった。本研究費の主な用途は、文献の購入と、研究推進のために必要な研究会・学会への出席、および成果報告のための学会への出張旅費であるので、本年度は前年度の遅れを取り戻すべく最善の努力をする。
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