本研究は、これまでホイッグ主義革命という観点から考察されてきたアメリカ革命観を、イギリス領北アメリカ植民地の王党派による革命であったという学説を踏まえて再検討する試みであった。これは、アメリカにおけるアメリカ革命史研究でまさに行われている現在進行形の研究であり、本研究もこうした先端的な研究の中で、試行錯誤の連続であった。それは、「イギリスの比較的弱い絶対王政期に発布された「勅許状」に基づいて創設されたイギリス領13植民地が認識していた英国国制論と、1688年の名誉革命以降のイギリス議会主権と責任内閣制度が提示したイギリス統治論との齟齬によって北アメリカ植民地13邦の分離・独立を導いた」という、昔からよく知られてきた素朴な歴史理解を再検討する試みであった。 本研究はアメリカにおける最新のアメリカ革命史研究、アメリカの政治文化研究、そしてイギリス帝国論研究の成果をフォローするとともに、近年参照されることが極めて少なくなった、アメリカ政治思想史についての諸論考を改めて読み直し、研究課題に示される研究目的の達成を目指した。 研究期間の最終年度に学会誌に発表した二つの論文が概ねこの研究計画によって達成された成果であったと考えている。一つは、日本アメリカ学会編『アメリカ研究』(53号)に掲載された「ジョン・アダムズの混合政体論における近世と近代」という論文であり、これはアメリカの政治理論家が、英国国制論を近代的自然権論を用いて読み替える構造を明らかにしたものである。もう一つは、日本政治学会編『年報政治学』(2019ーⅠ)に掲載された「アメリカ革命期における主権の不可視性」という論文であり、これは「国王」なきアメリカ共和政体において、主権を構成する試みを明らかにするものであった。いずれも、「アメリカ革命の王政的解釈」という研究課題の達成に資するものであったと考えられる。
|