研究課題/領域番号 |
16K03490
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
薬師寺 克行 東洋大学, 社会学部, 教授 (00611378)
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研究分担者 |
井上 正也 成蹊大学, 法学部, 教授 (70550945)
王 雪萍 東洋大学, 社会学部, 准教授 (10439234)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本 / 政治 / 清和会 / 政界再編 / 派閥政治 / 安倍慎太郎 / 塩川正十郎 / 小泉純一郎 |
研究実績の概要 |
1993年の自民党政権の下野から22年が経過し、「55年体制」末期の日本政治も漸く歴史研究の対象に入りつつある。しかし、同時代を政治史的に考察する上には未だに分析上の課題を抱えている。第一は、信頼できる一次史料の不足である。第二に、政界再編に関するこれらの二次文献の多くも、自民党経世会を中心とした記述に偏重している点である。ゆえに、同時代に自民党の派閥政治を担っていた安倍派清和会や宮沢派宏池会の派閥の実態については殆ど解明されていない。とりわけ、安倍晋太郎から三塚博へと継承された清和会は、派内に新党さきがけを率いた武村正義、石原慎太郎や党内「右派」を多く擁していた亀井グループ、小泉純一郎といった政界再編後に重要な役割を示す多くの人材が所属しており、清和会内部に存在した政治改革構想や派閥観を検証することなしに、90年代前半の政界再編の描くことには大きな限界があろう。 本研究では、研究代表者が政治部の清和会担当記者であった1989年から94年までの記録を活用した。同記録には安倍晋太郎、安倍派幹部であった三塚博や塩川正十郎、小泉純一郎、武村正義の肉声が残されており、55年体制末期から政界再編期にかけての清和会内部の政治改革に対する議論や、政界再編に対する見通しなどをうかがい知ることができる。本研究は、ジャーナリストの経験を積んだ研究代表者と、戦後政治外交史を専門とする研究分担者(井上)と共同作業で、取材メモの本格的な調査分析を実施している。 この作業とは別に研究代表者の薬師寺は、村山富市元首相に対するインタビューと資料の再チェックをしたうえで、単行本として2012年に出版された「村山富市回顧録」(岩波書店)の解説部分など加筆修正したうえで、同書を文庫本化し「岩波現代文庫」から出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最大の特色は、研究代表者(薬師寺)が朝日新聞政治部時代に蓄積した取材メモの整理・分析を通じて、政界再編期の政治史研究の基盤を構築することにある。28年度と29年度は薬師寺メモの整理とPDF化を行い、また取材したインタビュー記録のテープの整理作業を中心に行った。資料のPDF化作業は予定よりやや遅れ、29年度末で完了し、グループ内での共有も行ったが、検索システムの構築作業は、PDF化作業の遅れによって、29年度末から開始したため、分析作業を含め、進度は申請当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、検索システムの構築作業を主に担当している研究分担者(井上)に多めに研究費を配分し、作業するための大学院生の謝金を確保し、年度前半に、作業完成する予定である。 年度後半では、資料整理・調査以外にも、資料分析、インタビュー調査、事例研究にも重点を置き、資料分析のために学生研究補助者を追加して、取材メモ並びに収集した資料・インタビュー記録の分析を行う。年度末ではそれまでの研究成果を外部研究会等で報告し、日本政治や政治史の研究者からのフィードバックを得る。また研究代表者を中心にインタビュー記録の公刊を進め、本研究の調査分析の結果に基づく研究報告の公刊を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由): 29年度の研究費は50万円ほど残っていた。それは予定していたアルバイト謝金であった。29年度前半で終了予定の取材メモのPDF化作業は、作業量が多いため、結局年度末までかかってしまった。当初研究分担者(井上)が主に担当する資料データベース検索システム構築する作業は、年度末からスタートすることになり、そのため準備していたアルバイト謝金の支出が29年度ではほとんど支出できなかった。次年度、東洋大学の事務局(薬師寺研究室と王研究室)以外に、研究分担者の成蹊大学法学部の井上研究室で多めに学生研究補助者を雇用し、データベース検索システム作業を年度前半で終了させ、年度後半は資料分析と研究成果の公表を中心に進める予定であり、研究費の消化と研究進度の遅れを取り戻すことができると考えている。 (使用計画) :謝金・人件費:40万円。 物品費:10万円
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