研究課題/領域番号 |
16K03494
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
野田 遊 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (20552839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シェアードサービス / 自治体連携 / 財政効率 / 民主主義 |
研究実績の概要 |
初年度の主たる研究目的はシェアードサービスの全容解明であり、まず、文献調査を通じてシェアードサービスに関わる先行研究を収集した。自治体間でサービスや政策の資源をシェアすることにより得られる効果について調査した結果、資本集約型のサービス(たとえばごみ処理や消防等)は、労働集約型サービスと比べ効率化効果が高いという研究情報を収集し、一方で、自治体間でサービスをシェアするにあたっての集合行為上の課題についても把握した。 あわせて米国の自治体へのインタビュー調査も当初の予定どおり実施した。具体的には、事前に、米国で最もシェアードサービスが進んでいる地域を海外の研究仲間から情報収集することにより、ミシガン州であることを特定し、当該州における自治体として、イーストランシング市、デルタタウンシップ、デルハイタウンシップ、ヘーゼルパーク市のシティマネージャやタウンマネージャに、シェアードサービスの実施状況や効果と課題について情報をした。あわせて自治体間の連携組織として、南西ミシガンCOG(Council of governments)やミシガン自治体サービス公社、ミシガン自治体連盟のディレクターにもインタビュー調査を行った。これらのインタビューで明らかになったことは、バックオフィスからフロントラインに至るシェアードサービスの種類、実現の契機や課題、シェアードサービスの対象(施設、人、情報、権限、財源)である。 アメリカ住民アンケートについては、初年度の実施を見合わせた。理由は、上記インタビューをした結果、想定以上に多様なシェアードサービスがあり、アンケート対象を吟味し直す必要が見出せたためである。 なお、統計分析について、わが国の一部事務組合のデータを用いてシェアードサービスの解析を行い、シェアードサービスは必ずしも効率的にはならないことを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の収集や米国自治体インタビュー、また統計解析については予定通り進めたが、米国住民に対するアンケート調査は、インタビューの結果、多様なシェアードサービスのパターンがあり、アンケートで情報収集を行う前に、シェアードサービスのパターンについてさらに吟味、検討する必要が生じたためである。 ただし、アンケートの基本的な設問項目は既に検討しており、今後さらにサービスのパターンを把握するなかで、設問をかため実施することとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
29年度はさらに米国の自治体インタビューをさらに増やして実施し、シェアードサービスの多様性の全貌把握に迫ることとしたい。あわせてシェアードサービスのパターン別の効果や課題について明らかにすることも想定している。 また、日本の自治体に対するインタビューも実施する計画である。インタビューの対象は近い地域から実施しつつ、特に一部事務組合の運営が非効率となっている、あるいは一部事務組合の運営により構成自治体の財政効率が向上しているような成功事例などを探索し、調査を行う予定である。一部事務組合等の効果と非効率の要因をインタビュー等により把握し、日本のシェアードサービスの可能性を分析したい。 28年度はシェアードサービスによる財政効率を統計的に明らかにし、フィリピン(Eastern Regional Organization for Public Administrationの年次研究大会)での研究報告や、香港大学のジャーナル(Asia Pacific Journal of Public Administration)への掲載採択を果たしたところであるが、今後、シェアードサービスの民主性についても分析手法を検討しながら、そのあり方を検討したい。つまり、複数の自治体がサービスや政策資源をシェアすることは、裏を返せば、単独自治体の時に明確であった、応答的責任やアカウンタビリティが不明瞭になることを意味している。そのような複数自治体の連携はしかしサービスの維持が困難な地域では財政効率を高めるうえで魅力的であり、これら民主性と効率性についていかにバランスの検討に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国住民へのアンケートを実施する予定であったが、インタビュー調査の結果、シェアードサービスのさらに多様なパターンを吟味してからアンケートを実施することが望ましく、そのためアンケート実施を見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでにアンケートの設問内容をかためつつある段階である。29年度に新たに米国の自治体等へのインタビューを実施するなかで、シェアードサービスの多様性やパターンを把握することとしたい。シェアードサービスの全貌把握のち米国住民に対するアンケートを実施する計画である。
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