研究課題/領域番号 |
16K03495
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
川田 稔 日本福祉大学, 子ども発達学部, 教授 (20115554)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 安全保障構想 / 浜口雄幸 / 加藤高明 / 田中義一 / 国際連盟 / 永田鉄山 / 宇垣一成 |
研究実績の概要 |
両大戦間期日本において重要な役割を果たした政治家・軍人の安全保障構想を、当時の東アジアをめぐる国際環境のなかに位置づけながら比較検討するため、本年度は、おもに1920年代政党政治期の主要政治家・軍人の安全保障構想を、その国家構想、世界戦略と関連づけながら分析・検討した。 まず、当該時期の現実の国際関係と国内の政治状況の詳細を把握したうえで、政党政治の内外政策をもっとも推し進めたとされる浜口雄幸の安全保障構想を、その国家構想、世界戦略構想と関連させながら、これまでの研究をふまえ概括的に検討した。 そのうえで、各政党の安全保障政策とともに、当時の主要な政治家・軍人のとりわけ加藤高明、高橋是清、田中義一、若槻礼次郎、幣原喜重郎、宇垣一成、永田鉄山などの安全保障構想を、彼らの国家構想・世界戦略と関連づけながら分析・検討した。そのさい、主要な政党政治家の安全保障構想と世界戦略は、国際連盟を軸とした新しい国際秩序の形成という第一次大戦後の世界の潮流に対応しようとしたものであることを明らかにした。また、陸軍内部で、政党政治に同調的な宇垣ら(宇垣派)と、それに批判的な永田ら(一夕会)の対立が生じていることを、その安全保障構想の相違から照射した。これが後の満州事変以後の陸軍の動きと繋がってくる。 さらにこのような日本の安全保障構想や内外政策の動向と対照させながら、中国側の北京政府および南方政権、満州奉天軍閥の対日政策、外交政策と、それぞれの政治指導者である段祺瑞・汪兆銘・蒋介石・張作霖・張学良らの対日政策構想、外交戦略の検討をおこなった。 それに加えて、米英の東アジア政策、外交政策、その担当責任者であるケロッグやスティムソン(米国務長官)、チェンバレン(英外相)の東アジア政策構想、世界戦略も分析・検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本における各政党や個々の政治家・軍人(加藤高明、高橋是清、浜口雄幸、若槻礼次郎、宇垣一成、永田鉄山、 田中義一、幣原貴重郎など)の世界戦略、国家構想、安全保障構想の検討は、計画通り順調に進んでいる。 また、中国側(蒋介石、王正廷、張作霖など)の対日政策構想についての検討、それらと日本側の政策との相互関係や日中双方の構想内容の比較分析、さらに、米英(ケロッグ、スティムソン、チェンバレンなど)の東アジア政策構想の検討についてもほぼ順調に進んでいる。ただ、初年度の助成金の交付内定が10月となったこともあり、当初の計画以上に進展しているとはいえず、全体として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1920年代はじめから第一次世界大戦期(1910年代)まで順にさかのぼっていくかたちで、本年度と同様な方法で研究を進める。 具体的には、同時期の国際関係と日中関係の展開の詳細な把握を前提に、この時期の、山県有朋、原敬、田中義一、寺内正毅、加藤高明、高橋是清、加藤友三郎、田中義一、ら主要軍人、政治家の安全保障構想を彼らの国家構想、世界戦略関連づけながら分析・検討する。 さらにそれと対照させながら、中国側の対日政策および欧米諸国の東アジア政策、英米政治指導者の東アジア政策構想を分析する。 中国側では、この時期の孫文、張作霖、陳友人などの構想が、米英では、ウイルソン、ブライアン、ヒューズ、バルフォア、カーズンなどの構想の検討が対象となる。 なお、今年度途中で、1930年代、1940年代について、木戸幸一ら宮中の安全保障構想や世界戦略の重要性に気づいたので、その点についての補助的な分析検討をおこなう。また、3年間の研究の「まとめ」もおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 初年度の平成28年度交付内定が10月となったため、助成金の使用開始がおくれ、その結果、助成金を使用しての研究期間が短く、その分を平成29年度使用に移した。しかし、平成29年度当初使用予定額は予定どおり使用したが、今年度途中で、1930年代、1940年代について、木戸幸一ら宮中の安全保障構想や世界戦略の重要性に気づいたので、その点についての補助的な分析検討をおこなうため、平成28年度から平成29年度に移した金額の一部を、平成30年度使用に移した。 (使用計画) 1930年代および1940年代について、宮中の中心人物であった木戸幸一内大臣らの安全保障構想、世界戦略についての分析・検討をおこなう。そのため、平成30年度に、国立国会図書館、防衛省防衛研究所などで、資料収集・分析などを行うとともに、関係図書を購入・収集し検討を深める。
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