2018年4月に韓国外交史料館を訪問して、1987年韓国外交史料に関する調査を行い、韓国の北方外交および韓国の民主化をめぐる米韓関係に関する史料調査を行った。その結果、韓国の北方外交を主導したのは大統領府であったことは否定しないが、外務部の持続的な努力があったことを明らかにした。さらに、そうした北方外交の構想が1980年代に入って唐突に生じたのではなく、1970年代の韓国外交との連続性が存在したことを明らかにすることができた。 さらに、8月に米国ワシントンDCの国立公文書館および議会図書館を訪問して、1970年代および80年代における米国の対韓、対朝鮮半島、対北東アジア政策に関する外交文書を中心とする史料を調査した。その中で、特に、1987年の韓国の民主化に至る過程で、米国が韓国の民主化をどのように考えていたのか、特に、韓国の政治的安定という米国の政策目的を達成するために、韓国の民主化が必要だと考えるのに至った米国の対韓政策の変化を実証的に明らかにすることができた。 以上のように、米韓両国の外交史料を相互にクロスチェックして調査することにより、1970年代、80年代、ちょうど米中関係や日中関係など冷戦が変容する時期において、韓国外交が南北体制競争、外交競争を意識しながらも、北朝鮮に対する体制優位、外交優位を獲得するために、どのような外交を構想していったのか、また、そうした陣営をまたぐ外交を同盟国である米国との間でどのような調整をおこなっていったのかを明らかにすることができた。 そして、そうした韓国外交の構想が、ポスト冷戦後においても、北朝鮮に対する優位を活かして韓国主導の南北平和共存をいかに制度化して、北朝鮮をその枠に組み込むのか、そして、それに日米や中ロなどの大国の力をどのように利用するのかという観点から、連続性を持つことを明らかにし、現状分析にも活かした。
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