研究実績の概要 |
本課題2年目となった今年度は、アルゼンチンで調査を行い、2つの国際研究集会において司会やパネル発表者を務め、英語論文を発表した。 まず、7月に豪クイーンズランド大学で行われた第13回国際ジェノサイド研究学会「正義とジェノサイドの予防」では、「人道に対する罪を問う1965年事件に関する民衆法廷の考察」というパネルの司会をした。本パネルは本課題でも探究してきたインドネシアの9・30事件後の虐殺をジェノサイドあるいは人道に対する罪という観点から議論したものである。 次に12月に米コロンビア大学で行われた歴史的対話・正義・記憶ネットワーク主催会議「時間、記憶、そして歴史的正義の交渉」において、「インドネシアのジェノサイドを解釈する」のセッションで「比較の視点でみるインドネシアの1965年」を発表した。近年におけるポリティサイドの議論やアルゼンチンにおけるジェノサイドの議論の展開を紹介し、人道に対する罪の限界を指摘した。 9月にはアルゼンチンでの調査を行った。アルゼンチンでは軍事独裁政権時代の3万人近い失踪事件の追及が現在まで続いている。その裁判においてその時代の弾圧をジェノサイドとして描くという判例が生まれており、新しい考え方が法律的にも出されている。これをめぐって法学者、歴史学者、社会学者、人権団体、裁判官、弁護士等と意見を交換した。 3月にはインドネシアの虐殺に関する論集が出版され、それに本研究の成果である論文を収めることができた。The 30 September Movement and Its Aftermath in Bali, October-December 1965で、Katharine McGregor, et.al. eds. The Indnesian Genocide of 1965, Palgrave Macmillan, 2018.
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