本課題最終年度となった平成30年度においては、事例として新たに韓国・光州事件を加え、それについての文献研究及び現地調査を実施し、アルゼンチン・韓国・インドネシアの事例を比較検討するワークショップを開催し、2本目の論文の執筆を開始した。 光州事件を加えたのは、冷戦期のポリティサイドを類型化する上で、ラテンアメリカ、東南アジアとは別に、東アジアをひとつの地域的類型として考えられないかと考えたからである。韓国の光州事件と台湾の二・二八事件は冷戦を背景としつつも、本質は民主化運動の弾圧である。このことを調査するために10月光州市に行き、史跡を訪ね、研究者と面談する等の調査を行った。次に2月にアルゼンチン・韓国・インドネシアから3名の研究者を招へいし、国内の討論者3名を交えて事例を比較検討するワークショップを開催した。また、本研究に関連して、3月に早稲田大学で開催されたIsaias Rojas-Perez教授によるペルーの移行期正義に関する講演会でコメンテーターを務めた。以上の調査やワークショップを通じてポリティサイドにおける「本質化」の実態は敵対勢力の「本質」の認知から出発するのではなく「本質化」しなければならない戦略的必要性から来る、そしてその必要性とはすなわち「破壊意図」であるというモデルに辿り着いた。今後はこの点を深く探求して行く。 3年間の研究期間においては、インドネシア、カンボジア、アルゼンチン、韓国で調査を行い、2つの国際学会で発表した他、海外での講演を2回行い、国内で講演会(光州事件)と政治的殺害に関する国際ワークショップを開催し、講演会のコメンテーターを務めた。英語論文1本を書籍の一部として発表した。次年度(2019年)7月カンボジアでのジェノサイド学会と12月台湾での東南アジア研究学会で成果を発表すべく2本目の論文の執筆に取りかかった。
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