研究課題/領域番号 |
16K03519
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
友次 晋介 広島大学, 平和科学研究センター, 准教授 (90622019)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アジア原子力センター / バンドン会議 |
研究実績の概要 |
オーストラリアの文書の渉猟、及び日本学術会議等の日本の収蔵史料の発掘と分析から、1950年代後半、イギリスは勢力圏における紐帯維持を目的に、原子力を活用することを企図していたことが改めて確認され、他方でその勢力圏下の旧植民地国(とくにインド)も原子力平和利用を発展に欠かせないものとして大きな期待を寄せていたことが確認された。 アジア・アフリカ諸国は、バンドン会議を工業的後進性への不服の表明、異議申し立ての場と位置づけ、原子力平和利用を重要なアジェンダに含めていた。アメリカの原子力平和利用分野での国際協力の展開は、こうしたグローバルな「南側」からの期待、運動への一つの応答(こうした運動が中共やソ連にからめとられないよう)であった面もあり、このことが、原子力分野での英米間の競争を誘発した。アジア原子力センターをめぐる英米の意見の相違もこうした中で発生した。本年度の研究では、このような構図が明らかにされた。 加えて、アジアを場裏とする英米の原子力国際協力の進展から取り残されるという不安が日本の一部の政治家の中から強力に惹起され、このことがアイソトープセンターやアジア太平洋原子力会議といった、日本独自の原子力国際協力の着想につながったことも又、明らかにされた。本年度の研究では、こうした原子力平和利用を媒介とする英米及び日本の国際協力の「連鎖」が解明された。 プリンストン大学は2017年8月、2日間にわたり核・原子力をめぐる政治学、国際関係史の研究者を集めた国際会議を、広島の地で開催したが、友次(代表者)は同会議において、上記の研究内容を踏まえた発表を、The Bandung Conference and the origins of Japan’s Atoms for Peace aid program for Asian countriesとのタイトルにて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度では、コモンウェルス原子力科学者会議が開催された事実、また同圏内の科学者の往来、積極的な情報交換が存在したことを明らかにしたところであるが、本年度においては、科学者やエンジニアによる越境的な知のネットワークにイギリスが具体的にどうかかわっていたのか、積極的に支援していたのか、またはしていなかったのか、それはどうしてなのか、昨年度のイギリスの調査に引き続き、オーストラリア側の史料でそれらしい文書を踏査した。その結果、初年度以上には詳細な情報は外交文書中には存在していないと思われた。 本年度の研究ではカナダの史料館の調査は未達(繰り越し)であるが、オーストラリアの史料、原子力研究開発機構等の史料の渉猟・調査を実施した。一方、日本の学術会議図書館、東北大学史料館、名古屋大学坂田昌一文書に貴重な文書があることが判明し、調査に追加した。その結果、アジアを場裏とした英米の原子力国際協力の競合関係がより詳細な形で明らかにすることができた。また、日本が原子力分野での国際協力を着想したのは、多分に英米に触発されていたことも明らかにできたことも重要な進捗であった。以上のことから、研究はおおむね順調に達成できてきていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においてはインド国立公文書館を調査する。本年度に訪問できなかったカナダの国立公文書館での史料調査を行いたい。科学者間の人的ネットワーク、交流については、外交文書に現れない面があり、一般紙、専門誌、原子力機関紙などの二次的資料の収集と分析を行うこととしたい。これにより、イギリス及び、被援助国の原子力開発に対する観方を整理していく。 オーストラリアの史料館で所在を確認できた文書の中で、機密解除されていないものについても解除申請を進めるなどして史料の充実を図っていく。コモンウェルス内の黎明期の原子力行政において責任的地位にあった人物の学歴を確認するとともに、科学者の往来についても確認作業を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が、カナダの史料調査を最終年度に繰り越したことが主原因である。その代わり、新たに所在が明らかになった国内の文書の調査を拡充したが、旅費はその分抑制された。また、1人の連携研究者(土屋由香)には初年度に米国での史料調査のみ実施してもらっているが、残りの2人の連携研究者については、本人都合により、本年度も外国旅費を必要とする研究は実施しなかったため。
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