2018年10月5日に第217回広島大学平和センター研究セミナーを開催し、それまでの研究を基に「British Atoms for Peace Overseas」のタイトルで発表した。この中で、コモンウェルス諸国と英国の原子力を通じた特別な関係について明らかにした。また、インド国立公文書館で史料調査を行った結果、英国の原子力開発の中心人物であったコッククロフト卿と、インドのホミ・バーバー原子力委員長との1955年5月における会談録を発見した。英国がどの程度、原子力協力を行い得ると伝えていたのか、インドがどのような関心を持っていたのかが明らかとなった。さらに、カナダの国立図書館文書館所蔵の史料を分析した結果、コモンウェルス諸国に向けた英国の原子力協力の展開がより明瞭となった。ここでは、1955年2月開催のコモンウェルス首相会議の議事録を発見した。軍縮と原子力平和利用の二つが議題とされたこの会議で、英国は原子力開発分野での国際協力の準備があることを宣言した。加えて1957年のコモンウェルス首相会議で「コモンウェルス原子力科学者会議」が翌年に開催されることが決まったことも明らかとなった。この会議の存在については、すでに研究初年度に分かっていたが、詳細は不明であった。しかし、カナダで発掘した文書の中に会議開催の目的、参加者のリスト、行程を発見し、英国政府がいかにこの会議を重視し、綿密に計画していたことが明らかになった。同会議には参加したコモンウェルス諸国の代表団には、インドのホミ・バーバー、パキスタンのナジール・アフメッド、南アフリカのAJA. ルーなど、後年核兵器開発を行うことになる三カ国の原子力開発の礎を作った中心的人物が含まれた。最終日にはエリザベス女王とエディンバラ公フィリップ王配が彼ら代表団と昼食をともにするなど、英国のコモンウェルス諸国への厚遇ぶりが明らかとなった。
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