本研究では、ボスニア・ヘルツェゴビナ(BH)およびクロアチアにおける複数の事例研究において、ビジネスによる社会的・経済的権利の実現が確認され、ビジネスにおける自主性の発揮、エンパワーメントの効果も明らかになった。また、ビジネスにおける協働に関しては民族の違いにこだわることなく、自然な関係が形成さていることが確認された。しかし、BHでは全国ネットワークを形成しようとする農業生産者が、民族分断による既得権益を守ろうとする政治エリートの協力を得られず苦境に立つ。このようなネットワーク形成が社会関係を変化させ、平和構築の文脈において民族ベースの政治的分断を乗り越える可能性を秘めていることを示している。
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