研究課題/領域番号 |
16K03525
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
沖村 理史 広島市立大学, 付置研究所, 教授 (50453197)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候変動 / 国際制度 / 実効性 |
研究実績の概要 |
2016年度から行ってきた本研究は、パリ協定の成立を前提とし、パリ合意の実効性の実証分析と国際関係理論への示唆を研究の目的として設定した。これまで、パリ協定の詳細ルールの決定過程を調査するため、国連気候変動枠組条約の締約国会議に参加し、国際交渉を参与観察してきた。と同時に、決定されたパリ協定の詳細ルールが気候変動政策に与える影響を評価するため、国レベルや企業レベルの気候変動政策についても情報収集に努め、パリ協定の実効性の評価に必要な実態調査を行ってきた。 本研究の最終年度としていた2020年度は、新型コロナウイルスの世界規模での蔓延により、各国が国内措置を更新し報告する予定となっていた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が一年延長となったため、本研究も一年延長した。2021年度は、一年延長されたCOP26が開催されたものの、コロナ禍下の海外出張に関する学内規定に基づき、海外出張が許されなかった。このため、COP26に参加して関係各所への聞き取り調査や、交渉の実態調査を行うことができず、オンラインで開催された一部の会合を聴講するにとどまった。そこで、本研究を一年再延長して2021年度にできなかった実態調査を2022年度に行うこととした。なお、2021年度は実態調査はできなかったものの、これまでの調査を踏まえた分析は当初の予定通り実施し、パリ協定の実効性の評価について論文にまとめ、論文集の一章として発表した。それに加えて、アジア地域における国際制度の実態を論文にまとめ、論文集の一章として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、新型コロナウイルスの世界規模での蔓延により、一年延長となっていた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が対面で開催されたが、コロナ禍下の海外出張に関する学内規定に基づき、研究代表者は参与観察することができなかった。そのため、オンラインで可能な範囲で情報収集に努めた。また、パリ合意の実効性の実証分析については、論文にまとめ、論文集の一章として発表した。 このように、気候変動ガバナンスの変容の状況について、コロナ禍で実態調査に制限がある中でも実施可能な資料収集を行うとともに、パリ協定の実効性を検討・分析し、論文として発表しており、継続して成果を発表し続けている。このように、本研究の申請時に示した研究計画では想定していない状況下でも、適切な調査と成果の発表を行うことができているため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本来、2020年度に終了する予定であった本研究は、コロナ禍によって大きな変更を余儀なくされた。2021年度には一年遅れて国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されたが、既に述べたとおり、学内規程の関係で参加できず、実態調査ができなかった。そのため研究期間を一年再延長し、COP27に参加して、パリ協定のもとで各国の国内対策がどのように強化されパリ協定の実効性を高めたか、聞き取り調査を含む実態調査を実施したい。ただし、コロナ禍の状況次第で会議の開催形態(対面/オンライン)や開催時期は流動的な状況にある。その上、学内規定による教員出張の可否は、今後の研究計画に大きな影響を影響を与える。 仮に2022年度内に会議が開催され、かつ学内規定で海外出張が可能になった場合は、国際交渉の現場で、パリ協定によって各国・各地方自治体、各ステークホルダーの気候変動政策がどの程度進展しているのか、聞き取り調査を行う予定である。また、同時並行して気候変動ガバナンスや国内、地域レベルでの気候変動政策決定過程に関する文献調査を行う。会議が実行されない、あるいは会議に参加できない場合は、COP26あるいはCOP27に参加した国内のステークホルダーへの聞き取り調査で実態調査を代替する。同時に、各国が強化しつつある国内対策について資料収集を行い、現状における評価を行う。その上で、これまでの研究を踏まえた国連気候変動枠組条約体制の実効性について、最終見解をまとめる予定である。したがって、研究費の多くは旅費に用いられ、一部は文献調査に必要な書籍、論文購入に充てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度予算で現地調査のため参加することとしていた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、コロナ禍で開催が一年延期されたため、研究期間を延長して対応した。また、2021年度に開催されたCOP26は、学内規程の関係で参加できなかったため、旅費を執行しなかった。これらの理由から生じた次年度使用額は、2022年度の調査研究で執行される。具体的には、2022年度に開催される国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で聞き取り調査を行うための旅費に充当する予定である。本研究は、基金によって行われているため、このような外的条件の変化にも柔軟に対応することができ、複数年度にわたる研究計画を遂行する上で大変ありがたく感じている。
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