研究課題/領域番号 |
16K03526
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
吉本 秀子 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (00316142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカ合衆国 / 対外情報政策 / 沖縄占領史 / 冷戦 / 心理戦 / アイゼンハワー大統領 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度中に本科研費を得て実施したアメリカ公文書調査、具体的にはカンサス州アビリーン市のアイゼンハワー大統領図書館にて収集した同大統領府文書およびエドワード・リリー個人文書の分析、検討を引き続き行った。エドワード・リリーはアイゼンハワー政権期に国家安全保障会議(NSC)の職員として心理戦の立案にあたった人物である。したがって、リリー文書には、冷戦前半期における米国の対外情報政権の成立過程を知るために不可欠の情報が多く含まれている。前年度に収集したリリー文書の検討から、そこには、彼自身が大統領府の職員であったアイゼンハワー政権期以降の文書も含まれるが、それ以前の第二次世界大戦期およびトルーマン政権期の文書も多く含まれていることが分かった。このプロジェクトの焦点は、アイゼンハワー政権期における米国の対外政策の成立過程を明らかにすることにあるが、それ以前の対外情報政策の成立過程と連続しているため、今年度は、第二次世界大戦終了した1945年から、合衆国情報庁(USIA)の設立までの時期に焦点を当て、歴史家でもあったエドワード・リリーが書き残した草稿「心理線史」の第1章から第4章までを中心に、これに関連する文書類を検討した。その成果の一部を論文「エドワード・リリー文書にみる米国の対外情報活動の成立過程ーーOWI解散からUISA設立までの<空白の時期1945-1953>を中心に」にまとめ、早稲田大学20世紀メディア研究所刊・雑誌『インテリジェンス』18号に投稿した。これと平行して、関連するNSC文書、特に対沖縄情報政策に関する文書を分析し、アイゼンハワー政権期における米国の対沖縄情報政策の変容」として2017日本国際政治学会・アメリカ政治外交分科会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費を得てアイゼンハワー大統領図書館で収集した文書のうち、本研究にもっとも関連する記述が見つかったのは、NSC文書とエドワード・リリー文書であった。その一方で、期待するほどの成果が得られなかったのは、作戦調整委員会(OCB)関連の文書であった。これは、OCB文書に対日政策関連の記述はあっても、対沖縄政策に関する記述がきわめて少なかったことによるものである。しかしながら、NSC文書とリリー文書を検討することで得られた成果は予想外のもので、本科研費を得て収集したアイゼンハワー大統領府文書と、研究代表者がこれまでに収集した米国の陸軍省文書ならびに国務省文書などを改めて比較検討することで、予定した以上の研究成果を進めることができた。全体としておおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も、前年度に引き続き、アイゼンハワー大統領図書館で収集した同大統領府文書の検討を行う。特に、前年度に検討したエドワード・リリー文書の検討を中心に、今年度は1953年9月の合衆国情報庁(USIA)設立に至るまでの経過を詳細に分析する予定である。また、前年度、米国立公文書館で収集した国防総省・統合参謀本部文書の検討を行うことで、占領が日本の独立以降においても対沖縄情報政策に与えた影響などに焦点を当てて、分析を進める予定である。平行して、昨年度より進めている研究成果の一部を英語で発表する計画を進める。具体的には、2018年6月、米国オレゴン大学で開催される国際メディア・コミュニケーション学会で成果の一部を発表予定である。
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