本研究の最終年度となった2022年度は、1972年の沖縄返還から50周年となる節目の年にあたっており、様々な「記念イベント」が対面とオンラインで開催された。その関係で、本研究の最終年度の活動は、このような「記念イベント」から論文執筆及び報告の依頼などを受ける形で成果を広く社会に公表・還元することができた。 その中で、本研究のテーマであるアイゼンハワー政権期と直接的な関係がありながら、これまで立ち入ることができすにいた沖縄と朝鮮戦争との関わりについて、これまでの成果を踏まえつつ、異なる領域の研究者と相互に知見を共有する機会を持つことができたのは意義深かった。米国の公文書に基づきながら沖縄占領史を研究していると、米国の統治者たちが、沖縄だけでなく、朝鮮半島、そして東アジア全体を見つめている事実を思い知らされることが多かった。特に、本研究が課題としてきたアイゼンハワー政権期は、朝鮮戦争の勃発から休戦という東アジア地域にとっては重要な時期にあたる。これまでも日本がその拠点の一つであったことは知られていたが、米国の占領下におかれていた沖縄と朝鮮戦争との密接な関係については散発的な先行研究があるのみだった。他方、韓国の研究者によって、朝鮮戦争と日本との密接な関係が指摘されてきた。しかしながら、そこに沖縄がどう関わったのかについては、必ずしも明確ではなかった。本研究が沖縄と朝鮮戦争という難しい課題の解決に全面的に取り組めたわけではないが、沖縄と朝鮮戦争というテーマで、韓国の研究者を交えてワークショップを開催することができたのは、最終年度における成果であった。 本研究の目的の一つは、アイゼンハワー政権期が米国の沖縄占領統治政策の重要な転換点であったことを実証することであった。同政権期における朝鮮半島情勢の変化は、米国が沖縄統治の方針を転換する重要な分岐点だったのである。
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