本研究は、民主化・ガバナンス支援を軸に据えながら、①国際協力での支援プロジェクトにおけるパートナーシップの実践を検証してその実態を明らかにすることを目指す。同時に、②民主化・ガバナンス促進の観点から見たパートナーシップの正当性と実効性を検証し、③国際協力におけるパートナーシップという手法自体のあり方について一般的な示唆を導くべく研究を進めるものである。最終年度にあたる本年度は、過去の調査を仕上げて、分析と比較を行い、まとめていくことを予定していた。 本年度も、これまで同様に幅広い先行事例や資料を収集しつつ、支援活動の追跡調査を続けた。特に、2018年7月の総選挙前後より、カンボジアにおける選挙支援活動について各種調査を行った。本年度は、2015年の総選挙で民主化が進んだミャンマーについても、NGOと政府や政党の関係に注目しつつ、20年3月に現地調査を行った。 本研究に関連した研究成果については、2019年5月「開発援助における民主化の争点化・非争点化」(宮脇昇編『国際関係の争点』志學社所収)という論文を公表した。査読論文としては、12月に「民主化支援の今日的課題――市民社会スペースの制約の問題を中心に」(『平和研究』第53号所収)、20年3月に「国際政治の構造変化と民主化支援の動向」(『和洋女子大学紀要』第61集所収)を公表し、「民主主義体制の脆弱化と権威主義体制の強靭化における国際的要因の考察」(『日本比較政治学会年報』第22号)を公表予定である。そのほか、2019年度の日本政治学会、日本比較政治学会、日本国際政治学会で民主化にかかわる報告を行った。 最終的な研究成果は現在取りまとめ中であるが、民主化やガバナンスにかかわる支援におけるパートナーシップは、政府の意思に左右がちであり、最初からうまくいかないか、活動が技術的で「非政治的」なものとなる場合が多いことが分かった。
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