研究課題/領域番号 |
16K03531
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
柑本 英雄 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00308230)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガバナンス / スケール / マクロリージョン / 領域的結束 / ドナウ |
研究実績の概要 |
1990年代のEU越境地域政策INTERREG によって公式的政策領域として登場した、新しい地域「マクロリージョン」は、国土計画・都市計画領域などとは異なった、海洋資源政策・地域政策・通商政策などの包括的な政策容器となってきた。この自然地理的空間スケールに基づいた、バルト海沿岸域や北海沿岸域のようなマクロリージョンでは、「国家の再スケール化」と呼ばれる現象が始まった。 EUが、バルト海・北海のマクロリージョンでのクロススケールガバナンスの成功に鑑み、ドナウ川という「地理的条件」を抽出し、この領域での結束を促し包括的地域開発の進展に結びついていることという仮説に対する検証を行った。 また、EUは10 年前に、ドナウ川流域を含むCADSES(中欧・アドリア海・南東欧州地域等)という、大きすぎる実験的マクロリージョンを導入して失敗した経験を持つ。2011年4月に策定された『EU ドナウ戦略』の公式的な策定プロセスの調査により、欧州委員会が、ドナウ川集水域を含む、前段階のINTERREG CADSES(中欧・アドリア海・ドナウ川流域・南東欧州地域)でマクロリージョン生成に失敗した理由について検証し、その地域開発グランドデザインVISION PLANETとの整合性をどのように保ったのかを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度計画に従って、ドナウ利害関係者年次会議(毎年10 月開催)に出席し、各関係機関の調査を同一旅程で実施した。また、2月にはドナウマクロリージョンを主導する行為体バーデン=ヴュルテンベルク州担当者へのインタビュー調査を行い、EU 欧州委員会によって「EU化」されたEU主導型の現状について、情報収集に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
流域国家間のプラットホームとしてのドナウ委員会(Danube Commission)では、河川問題に限定され、「集水域」の包括的基本戦略を組み立てられず、EU 主導の包括的枠組みが必要となったことを実証するため、ドナウ委員会関係者へのインタビュー調査を行い、これまでの国際河川委員会のガバナンスの問題点を規範形成の観点から検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリスのEU離脱問題などを受け、先方のEU担当者とのスケジュール調整が予定通りに行えなかったため、当初計画していた出張調査の規模を縮小して行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度予定している、ドナウ利害関係者年次会議調査(2017 年10 月)及びブダペストのドナウ委員会事務局調査のベルギー・ハンガリーへの調査に加えて、ドナウ戦略事務局(DSP)に財源を出し、ドナウマクロリージョンを主導する行為体バーデン=ヴュルテンベルク州担当者への実地インタビュー調査(ドイツ)を行う。
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