本研究では、ドナウ川集水域においてEU主導型のクロススケールガバナンスモデルが形成され、EUの領域的結束が強化されているとの仮説をたてた。「EUドナウ戦略(EUSDR)」を事例にこの仮説を立証するため、3度のハンガリー現地調査(①EUSDR年次総会出席(2017年10月)、②EUSDRおよびEGTC調査(2018年3月)、③CESCIの10周年記念大会出席および研究報告(2019年4月))のフォローアップと、日本大学法学部図書館の文献データベースを利用し、regionnessやfunctional regionなど関連英語文献の収集と読み込みを実施した。 ①で得た次期マクロリージョン戦略(Post 2020)の議論については、EUやEUSDR構成国家・地域の各担当者や研究者、2014年から研究交流を続け、Central European Service for Cross-Border Initiatives(CESCI)事務局長Gyula Ocskay氏と、インターネットを通じて打ち合わせも継続して行った。また、調査②でマクロリージョン戦略に関する意見交換を行ったオーストリア連邦政府持続可能・観光省のEUSDR 担当官僚Roland Arbter氏とも、メールによるフォローアップを行った。 本研究の成果として、現地調査で関係者と重ねたインタビューや議論、文献調査による理論研究の結果、ハンガリー国政府が、旧オーストリア=ハンガリー二重帝国時代から現在の国境を越えて居住するハンガリー民族の福利厚生をも考えた戦略の一環として、EU主導型の越境協力枠組みであるEUSDRやEGTCを利用しているのではないかとの下位仮説から、本研究の主たる仮説を補給することができるとの結論に至った。
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